農業の大規模化・企業参入促進という愚行 経済・雇用・食料自給率に打撃、自然資源劣化も
昨年11月24日、東京・立教大学経済研究所主催で公開シンポジウム「国際家族農業年から始まる小規模家族農業の道」が開かれた。昨年は、国連が2011年総会で定めた国際家族農業年に当たっていた。雇用労働に依存する企業農業に対し、主に家族が田畑耕作や家畜飼育などに従事するのが家族農業だ。
国連は(1)食料安全保障のための持続可能な食料生産、(2)15年までに飢餓人口割合を1990年水準から半減する「ミレニアム開発目標」(2000年採択)などの達成のために小規模の家族農業が重要な役割を果たすとして、国際家族農業年を定めた。なお、アメリカなどのように、農地が数百ヘクタールもあるような大規模な家族農業は除く。
それにしても、なぜ小規模の家族農業なのか。
同シンポジウムでは、その関連報告書「食料保障のための小規模農業への投資」をまとめた、FAO(国連食糧農業機関)の世界食料保障委員会研究チーム代表のピエール・マリー・ボスク氏(フランス農業開発研究国際協力センター上席研究員)や、チームに参加した愛知学院大学専任講師の関根佳恵氏などが発表を行った。
●小規模家族農業の存在意義の大きさ
「彼ら(世界中の小規模の家族農業)が農業をやめたら、どうなるのか」と、ボスク氏は問いかけた。日本ではつい大規模農業だけが強調されがちだ。しかし、12年の81カ国のデータによれば、農地1ヘクタール未満の小規模家族農業数は、全体の73%を占めるという。同2 ヘクタール未満なら85%になる。これが日本の場合、それぞれ55%、81%だ。つまり、世界的に見れば小規模の家族農業が圧倒的多数を占めている。
それだけではない。ふつう小規模家族農業は、大規模農業に比べて生産効率が低いとみられている。例えば、中国では2億戸の小規模家族農業が耕す農地は、世界全体の10%にすぎない。ところが、穀類などの生産量は世界全体の20%、つまり単位面積当たりの生産量は2倍もあり、生産効率は高いという。
このように、意外なことに量的にも質的にも小規模家族農業の存在意義は非常に大きい。ボスク氏が問いかけたように、小規模家族農業がなくなれば世界中で一大食料パニックが起きてしまう。
●大規模農業から家族農業へ
実は他の原因によるのだが、08年9月のリーマン・ショック発生の直前、実際にその世界食料危機が起きてしまった。