サービスインを前に、通信業界には大きな波紋が広がっている。これまで、NTTグループ内のセット販売は市場の寡占状態を招くとして規制されてきたが、これが緩和されることに対して、業界が競争環境の後退と利用者利益の損失を招くとして強く反発。特に、NTTがドコモにとって有利な取り決めを秘密裏に行い契約者を囲い込み、シェアを安泰にすることにより、将来的には料金の値上げなど契約者にとってさまざまな不利益が生じると懸念されているのだ。
●秘密裏に決められた「ドコモ光」が通信業界を壊す
NTTのこうした動きに対して、KDDI、ソフトバンクモバイル、ワイモバイルをはじめとする国内の通信会社は、NTTが行う光ファイバー回線の卸売とドコモ光の営業活動が健全な競争状態を妨げることのないよう、NTTグループ内の取引の透明性を確保するよう申し入れた。1月14日には、自民党の情報通信戦略調査会が、光ファイバー回線の卸売について透明性確保のため届出制とし、第三者機関がその内容を検証して結果を公表するべきとの提言を総務省に行った。これを受けて総務省は、NTTの卸売について必要なガイドラインを1月20日までに策定し、30日以上のパブリックコメント募集期間を経て、2月下旬のガイドライン施行を目指している。
このガイドラインのポイントとなるのは、自民党情報通信戦略調査会が、NTTのサービス卸開始に対して、NTTグループのみを優遇した連携が発生し、他社にとって不利な競争状態が発生することに懸念を示している点だ。提言では、NTTがドコモのみを対象とした安価な卸料金や割引を設定したり、過剰なキャッシュバックなどの営業活動によって地方で通信サービスを提供している地元ケーブルテレビ事業者などとの競争を阻害するような結果を生じさせた場合には、電気通信事業法における業務改善命令の対象とするよう、総務省に要望している。当然、ドコモ光はこうした意見を基に策定・施行されるガイドラインに則ったサービス設計を行う必要があり、一部の報道では「2月としているサービス開始を延期するのではないか」という見方もある。
しかし、こうした動きの中でも、ドコモ陣営は強気の姿勢を崩さない。ドコモ報道部は朝日新聞の取材に対して「2月開始の方針は変えていない」としており、ガイドラインの施行を予定している2月下旬よりも前に、サービスの詳細を発表し、契約者の募集や営業活動を“見切り発車”する可能性があるのだ。ガイドライン施行よりも先行してサービスを発表、契約者の募集を開始させてしまうことによって、総務省が策定したガイドラインの内容がパブリックコメントによって修正された際にドコモ光のサービス内容を大きく変更したり、または“見切り発車”が既成事実化することでガイドラインに対するパブリックコメントが有名無実化してしまうことも考えられる。いずれにしても、消費者にとって不透明感が拭えない船出となるのは確実なのだ。