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巨額税金=補助金頼みの定員割れ大学多数 毎年申請のみで億単位のカネ獲得

文=島野清志/評論家
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巨額税金=補助金頼みの定員割れ大学多数 毎年申請のみで億単位のカネ獲得の画像1日本大学(「Wikipedia」より/NUBuilding.jpg)
 3月、文部科学省所管の特殊法人、日本私立学校振興・共済事業団から、2014年度の大学(短大、高専を含む)への補助金の交付概要が発表された。

 交付額のトップになったのは日本大学で94億円、以下、早稲田大学86億円、慶應義塾大学85億円、東海大学64億円、順天堂大学56億円など、お馴染みのマンモス大学および医科系の大学が例年のごとく上位を占めている。

 私立大学にとって、申請書を手続きに従って提出すれば億単位の資金が交付される補助金は「年に一度の特別ボーナスのようなもの」(東京都内の私大関係者)だという。これも偽らざる感想だろう。補助金は文字通りの無償交付であり、たとえその後に大学が学生の募集停止や廃校に陥ったとしても、返済する必要はない。

 また補助金は前述した私学振興事業団を経由した国からのものばかりではなく、本部やキャンパスが所在する地方自治体からのものもある。いわば2本立てであり、国よりも地方自治体からの補助金の額が大きい大学も少なくない。さらに地方自治体からの補助金は、学内の不祥事などによって減額措置のある国からの補助金に比べて、より審査が緩い傾向にあるようだ。

「予算審議で、学校法人への補助金はフリーパス状態になりやすい。どの会派も教育関連の予算を削減するとは主張しづらく、また学校法人の理事長や理事が地域の有力者という事情もある」(首都圏の地方自治体職員)

 私大側からすれば、なんともおいしいシステムである補助金だが、大学の運営経費を補完するものであることも確かだ。その原資はまぎれもなく我々の納めた税金であり、本来私学はそれに頼らず自力で経営することが使命であり、存在意義にもなっている。

補助金に依存する大学

 ただ残念ながら、実情は大いに異なるようだ。学校運営を補完するどころか、それに重度に依存している大学や法人は少なくない。

 以下は定員充足率(定員に対する学生数の割合)が低い、いわゆる定員割れの状況になっている4年制大学を傘下に持つ学校法人の補助金への依存率を独自に試算したものである(データは各学校法人の14年3月期決算を基に、法人の年間収入に該当する帰属収入に占める補助金の割合を示したもの)。

【補助金依存度が3割を超える学校法人(カッコ内は大学名)】
・村上学園(東大阪) 41.08%
・大阪観光大学 38.26%
・郡山開成学園(郡山女子) 37.66%
・中越学園(長岡) 36.30%
・享栄学園(鈴鹿国際) 34.97%
・聖カタリナ学園 34.57%
・三島学園(東北生活文化) 34.09%
・柏専学院(新潟産業) 33.61%
・成美学園 33.13%
・興誠学園(浜松学院) 32.67%
・鎮西学院(長崎ウエスレヤン) 31.62%
・稚内北星学園 31.38%
・日本橋女学館 30.60%
・君津学園(清和) 30.58%
・高岡第一(高岡法科) 30.57%
・昌平黌(東日本国際) 30.16%

 以上の通り、依存率で3割を上回ったところが16法人もある。いずれも定員を埋めるのに四苦八苦している大学ばかりであるから、もはや補助金なしでは法人の運営は成り立たないと考えてよいだろう。このほかにも依存率が25%を上回っているところが25法人を数える。ちなみに支給額でトップの日大の依存率は9%台と1割を切っており、早稲田、慶應も1割台にとどまっているから、上記学校法人に対する厚遇ぶりは際立っている。

 想起されるのは、バブルが崩壊した1990年代以降、相次いで経営破綻して社会問題化した第3セクターだろう。官民が相乗りして出資した鵺的な組織は指揮系統が曖昧になり、無責任な体質を生んだ。

 いうまでもなく、少子化はなお進行しており、大学を取り巻く環境が中期的に改善する気配はいささかもない。国や地方自治体からの補助金に過度に依存している私立大学もいずれ、昔日の第3セクターと同じ道を歩むのではないか。
(文=島野清志/評論家)

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