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森秀明「『itte』の経営学」(9月7日)

「選択と集中」のまやかし シャープ失墜より考察

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「選択」「集中」「再選択」の相関図
 経営についての議論を見聞きすると、「選択と集中」という言葉がよく登場します。とても響きのいい言葉です。「選択と集中」と言えば、なんとなく効果的な施策が実行できているかのような錯覚に陥ります。


 ところで、企業にとって「選択と集中」の本当の意味はなんでしょうか。今回は、その実態に迫ってみたいと思います。

 経営における「選択と集中」は、「自ら選択した領域に自社の経営資源を集中投入すれば、高い成果が得られる」ということを意味します。

 冒頭の画像の左側のチャートは、その経営法則の図解です。自社にとって「とても重要」な顧客を選択し、彼らのニーズに合致する自社の商品・サービスに注力すれば、結果的に高い収益が生み出されるということです。

 以下のように言い換えることもできます。注力する自社の商品・サービスを決め、その商品・サービスを欲する「とても重要」な顧客を選び、その領域に経営資源を集中する。これも、同じように結果として高い収益がもたらされます。

 しかしながら、この「選択と集中」の法則は、本当に有効なのでしょうか。例えば、選択する顧客は本当に正しいのでしょうか。その顧客のニーズは、時間によって変化しないのでしょうか。また、自社の商品・サービスは、競合他社に対する優位性を保てるのでしょうか。新たに登場する代替品によって、自社の商品・サービスが脅かされる危険性はないのでしょうか。

 ここで、シャープの事例を考えてみたいと思います。同社は今年、「選択と集中」に関連した話題を提供してくれました。

 ご存じのように、近年のシャープは液晶技術とその技術を適用した商品に「選択と集中」を行いました。その結果、2015年3月期の決算は2000億円以上の最終赤字に落ち込んでしまいます。

 真空管からトランジスタ、IC(集積回路)、LSI(大規模集積回路)、液晶と、電子技術が進化する中で、同社5代目社長の片山幹雄氏は「液晶の次も液晶」と語り、液晶技術とその商品に「選択と集中」を行うことを選択しました。

 しかし、海外生産の安価な液晶が市場シェアを拡大し、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)という、液晶に替わる技術も進化しました。その結果、シャープは失墜してしまったわけです。

 このシャープの例では、「選択と集中」の戦略は機能しませんでした。競合他社が価格競争力を高めて安価な液晶を生産し、液晶に替わる有機ELという代替品が普及した結果、同社の液晶技術は短期間で優位性を失ってしまったのです。