破綻リゾートを次々と奇跡の再建…異端児・星野リゾートの豹変 「都市」へ殴り込み

星野リゾートは旅館・リゾートホテルの運営と不動産投資を経営の両輪にしており、星野リゾート・リート投資法人(以下、星野リート)を運営している。
不動産証券化ビジネスがブームだった2005年頃から、全日本空輸(ANA)は航空事業に経営資源を集中させるべく、世界最大規模のホテルチェーン、インターコンチネンタルホテルズグループ(IHG)とホテル運営の合弁会社を設立する一方、一部のホテル不動産を売却した。
IHG-ANA体制となった2007年、ANAは13ホテルの不動産と運営企業を米モルガン・スタンレーに売却。売却額は2813億円で、日本の不動産売買では過去最大規模(当時)だった。ANAは1300億円の売却益を得て、B787を中心とした新しい航空機材の購入などの設備資金に充当した。モルガン・スタンレーは各ホテルの運営企業を3社に分社化して施設を順次売却。15年7月にホライズン・ホテルズを星野リゾートに売却してホテルの転売は完了した。
経営破綻したリゾート施設や旅館を再生
星野リゾートグループ代表の星野佳路氏は、1960年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、米コーネル大学ホテル経営大学院で経営学修士号を取得。日本航空開発(現JALホテルズ)を経てシティバンクに転職。JALでホテル経営のノウハウを、シティバンクで債権回収の手法を身につけた。
1991年に家業の星野温泉社長に就任。95年に星野リゾートに社名を変更し、軽井沢で「ホテルブレストンコート」「星のや 軽井沢」などリゾート施設を経営してきた。
星野氏が異彩を放つようになったのは、シティバンクで鍛えた債権回収の手法を経営に取り入れたからだ。01年から「リゾナーレ」(山梨県)、「アルファリゾート・トマム」(北海道)、「磐梯リゾート」(福島県)など経営破綻した大型リゾート施設の再生を始めた。
05年からは米投資銀行ゴールドマン・サックスグループと提携し、「白銀屋」(石川県)、「湯の宿 いづみ荘」(静岡県)など、老舗の温泉旅館の再生に力を入れる。安く買い取り、独自のノウハウで再生させ、収益を拡大させた。
現在、35施設を運営している星野リゾートの14年の取扱高(売上高)は前年比8%増の392億円。事業規模から見て、ANAクラウンプラザホテルに400億円を投資するのはかなりの決断だ。