東芝不正会計、「甘すぎる」処分の真相 すべて予め決められたシナリオ
この初春に始まり、西田厚聰相談役、佐々木則夫副会長、田中久雄社長の歴代3社長辞任、さらには第三者委員会の調査報告書公表でも収集がつかず、世間を騒がせた東芝の不正会計・粉飾決算問題。9月7日には当初予定より4カ月遅れて2015年3月期決算を発表し、過去の決算訂正を含む有価証券報告書について2度の延期の末に関東財務局へ提出した。そして再発防止策の表明と室町正志会長の新社長就任で、一応の表向きの収束をみたようである。
今回訂正された過去の有価証券報告書の提出を受けて証券取引等監視委員会は、今後どの決算期に虚偽記載があったかを最終的に判断したうえで、金融庁に課徴金納付命令を勧告することになる。その金額は、東芝が課徴金納付に備えた引当金として84億円を計上していることから、同じ虚偽記載で2008年に総合重機大手であるIHIが課された約16億円を大幅に上回ると想定される。
また、東京証券取引所は9月15日付で、東芝株を特設注意市場銘柄に指定すると発表している。これで18カ月以内に東芝の内部管理体制等の改善が確認できない場合は、上場廃止となる。処罰が甘いという指摘もあるが、これで一応の公的な懲罰を受けて、東芝の粉飾決算問題は幕引きというかたちとなる。
しかし、当然これで東芝の抱える問題が解決したと思う向きは少数である。本稿では、この東芝問題の意味合いを多面的に考えてみたい。
メディアの報じ方に差
まず、今回の件に対する4大新聞(読売、朝日、日本経済、毎日)の取り扱いである。4月3日の東芝による「特別調査委員会の設置に関するお知らせ」に端を発する本件に関して、4大新聞は7月21日の第三者調査委員会報告書の公表前後までは「不適切会計」という表現を使っている。朝日と毎日は、委員会報告書公表の前後で不適切会計から「不正会計」に表現を変えている。しかし、現在でも不正会計であり、「粉飾決算」という表現を使うようにはなっていない。明確な定義はないが、不正会計よりも粉飾決算のほうが強い印象を与える。
一方、日経と読売は、現在に至るまで一貫して不適切会計(不注意などケアレスミスを想起させる用語)と表現し、不正会計や粉飾決算という用語は使用していない。
不正会計・粉飾決算といえば、2011年のオリンパス事件が思い出される。事件発覚の初期の頃から不正会計・粉飾決算という表現が使われ、日経ですら粉飾決算という表現を使っている。そして、オリンパスは東京証券取引所上場廃止の瀬戸際まで追いつめられていた。結局は、東芝同様に特設注意市場銘柄に指定され、1年半後に解除、上場を維持した。加えて、オリンパスの監査を担当していたあずさ監査法人と新日本監査法人に対して、金融庁は業務改善命令を下している。