東芝不正会計、「甘すぎる」処分の真相 すべて予め決められたシナリオ
この2社に対するメディアの扱いが違うのは、粉飾確定額で東芝はオリンパスを大きく下回るからであろうか。否、実は東芝のほうが大幅に上回っている。今回の東芝の粉飾額は計2248億円で、オリンパスは計1200億円程度の規模とされる。
それでは、オリンパス事件の発端が、月刊誌「FACTA」(ファクタ出版)という雑誌の調査報道であるのに対し、東芝の件は同社による「特別調査委員会の設置に関するお知らせ」という情報開示であるからであろうか。その後の展開はどちらも株価の急落、第三者調査委員会の設置である。オリンパスと東芝の違いは、株価の急落が先か第三者調査委員会の設置が先かの違いである。そしてどちらのケースも事態は深刻化する。オリンパスでは、菊川剛前社長(元会長)をはじめとする逮捕者を出し、刑事事件にまで発展した。
正論をいえば、犯罪と同じく裁判で判決が確定するまでは、犯人は容疑者であり罪人ではないのと同様に、今回の東芝のケースも会計処理を法的(強制捜査も含む)もしくは公的にみて、適切性・不適切性があるかを確定し、それが不正であると認定するまでは不正会計とも粉飾決算とも断定はできない。
内実が公になる前に、最初に第三者調査委員会を設置した東芝はやはり賢明な会社である。しかし、主要メディアは上記のような内容を理解し、かつ中立的に報道していただろうか。
そして、7月に公表された第三者調査委員会報告書(要約版)のなかで、監査法人への隠蔽の意図を認定しているにもかかわらず、会計操作を「不正」ではなく「不適切」と表現しているので、不正会計と断定できず、依然として不適切会計であるというのが日経と読売の認識なのであろうか。また、オリンパスは損失隠し、東芝は利益水増しと、粉飾決算の内容が違うからであろうか。つまり、利益水増しのほうが損失隠しより不正の度合いは軽微ということであろうか。
その動機はどうであれ、不正会計・粉飾決算は株主を欺く行為であり、その責任は極めて重い。このことについて、日経も読売も十分に理解しているはずであろう。しかし、当の東芝にその意識は薄そうである。そもそも株価操作という明確な意図が経営者にあったわけもなさそうであり、「適切な会計処理に向けての意識が欠如していた」東芝の役職員が、「チャレンジ」という名の圧力のもとに、当期利益の向上のために全社で不適切会計をしたというなんとも子供じみた話である。なぜ、このような子供じみたことが公然と行われるのかは次回考えてみたい。