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小笠原泰「生き残るためには急速に変わらざるを得ない企業」

東芝不正会計、「甘すぎる」処分の真相 すべて予め決められたシナリオ

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授

 ここまで見てきても、オリンパスと東芝のケースに対する主要メディア、特に不適切会計という表現にこだわる日経と読売の扱いの違いが、何に発するのかは見えてこない。しかし、もし東芝のケースが不正会計でも粉飾決算でもなく不適切会計であるのならば、両新聞は今後、不倫や浮気は「不適切交際」といわなければなるまい。

東芝への配慮

 上記以外にいくつか考えられる理由のひとつとしては、企業規模の差もさることながら、消化器内視鏡では世界シェアトップではあるが、カメラメーカーとしては劣後であったオリンパスと、穏やかで紳士的・公家的と形容される出自の良い優等生大企業であり、戦後に石坂泰三や土光敏夫(両名とも東芝出身ではないのだが)という日本経済界の重鎮を輩出し、代々の社長が経団連の要職を歴任する東芝では毛並みが違うということであろうか。日経と読売としては、不正会計という表現も憚られ、朝日や毎日としてはスキャンダル的な要素が強い粉飾決算という表現は東芝には馴染まないということであろうか。

 また、穿って考えれば、日本郵政社長で元東芝会長の西室泰三氏が自民党・安倍政権と蜜月であるため、安倍政権がマスコミの報道管制を公言していることを考慮すれば、主要メディアに躊躇が生まれたとしても驚くにはあたらないかもしれない。不正会計と表現する朝日、毎日と、不適切会計と表現する日経、読売では、現政権との距離が違うことは、よく知られているところである。

決められたシナリオ

 もっと、穿って考えるならば、今回の問題をどう処理するかは、発覚直後の時点で決まっていたのかもしれない。そのために不正会計・粉飾決算を認定されては困るので、あくまでも悪意のない不適切会計で押し切らなければならないのではないか。

 そのシナリオとは、東芝の上場廃止はしないというものだ。オリンパスは本業ではなく、財テク投資の損失隠しであり、それに関わっていたのはごく限られた経営幹部であったが、上場廃止の瀬戸際までいった。一方、東芝のケースは本業に関わる不正会計であり、全社ぐるみの不正経理である。どちらが企業犯罪として重いかは明白であろう。

小笠原泰/明治大学国際日本学部教授

小笠原泰/明治大学国際日本学部教授

1957年生まれ。東京大学卒、シカゴ大学国際政治経済学・経営学修士。McKinsey&Co.、Volkswagen本社、Cargill本社、同オランダ、イギリス法人勤務を経てNTTデータ研究所へ。同社パートナーを経て2009年より現職。主著に『CNC ネットワーク革命』『日本的改革の探求』『なんとなく日本人』、共著に『日本型イノベーションのすすめ』『2050 老人大国の現実』など。
明治大学 小笠原 泰 OGASAWARA Yasushi

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