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森秀明「『itte』の経営学」

間違いだらけの「コスト削減」の罠…従来型製造業モデルの終焉

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・利益 = 収入 - コスト


 本連載「『itte』の経営学」の第9回は、この当たり前の公式から始めます。

 いうまでもなく、企業が存続するための必須条件は利益を上げること。企業活動が永続するためには、適切な利益を出し続けなければなりません。

 冒頭の公式に従えば、企業は利益を上げるために収入面とコスト面でそれぞれ活動を行います。収入面では、顧客数を増やしたり、販売数量を増加したり、販売頻度を高めたり、商品単価を上げたりして、収入を増やす活動を行います。一方コスト面では、より安く調達したり、調達数量を減らしたり、単位あたりの生産性を上げたりして費用削減に取り組みます。利益を増やすための活動には、このどちらかの活動しかありません。

 ここではコスト面に着目します。コスト削減には、大きく分類して2つの方法があります。ひとつは、規模を生かしたコストダウン。通常、「規模の経済(スケールメリット)」と呼ばれています。もうひとつは、経験に裏打ちされた「コストダウン」。「経験曲線(エクスペリエンスカーブ)」といわれているものです。

 前者の規模の経済は、多くの経済学や経営学の教科書に登場していますので馴染み深いかもしれません。その定義は、生産規模が拡大することによって、一単位あたりの費用を逓減させる効果があるというものです。

 冒頭のチャートの左側は、規模の経済を説明したものです。たとえば、物価や労働賃金の安い経済圏に大規模工場を建設することは、規模の経済を追求した活動の例です。また新たな調達先から、原材料などを大量に購入して単価を下げることも規模の経済に相当します。これらの活動は、ある一時点でのコスト削減を狙った経営判断といえます。

 一方で、経験曲線は継続的なコスト削減活動に相当します。過去からの経験量の蓄積がコスト削減の源泉です。それは一時的にもたらされる効果ではなく、持続的に少しずつ改善され、コスト削減効果が現れてくる類(たぐい)の活動です。

 冒頭のチャートの右側にあるように、経験曲線は組織力の蓄積であり、それは決して一時的でなく長期的な視点でとらえたコスト削減です。つまり、地道な改善活動の積み重ねが経験曲線の基本中の基本です。例えば、取引先との協力のもと、毎年2%ずつのコスト削減を進めるような活動は、経験曲線の考えに相当します。

規模の経済の限界


 18世紀の産業革命から始まった大量生産型の製造モデルは、今日その変革が広がりつつあります。