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森秀明「『itte』の経営学」

間違いだらけの「コスト削減」の罠…従来型製造業モデルの終焉

文=森秀明/itte design group Inc.社長兼CEO、経営コンサルタント
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 米GEのジェフリー・イメルトCEO(最高経営責任者)は、製造業への回帰を唱えてIoT(モノのインターネット)化を推進しています。具体的な例としては、大量の3Dプリンターを活用して、発電用タービンの部品を生産する試みなどを推進しています。

 そのほかの例としては、工場の製造ラインで人と同じようにモノを扱うアーム型のロボットなどが挙げられます。机の上が工場になったようなデスクトップ・ファクトリー。これらの例も、新しい生産モデルを模索する試みです。

 このような例が示すように、従来のように生産規模の拡大のみでコストを下げるという製造モデルは見直しが進んでいるのです。3Dプリンターもアーム型ロボットもデスクトップ・ファクトリーも、これまでのような生産規模の拡大のみを追求したモデルではありません。

 いうなれば、規模の経済の追求だけでは市場の要求に応えられない、顧客のニーズやウォンツを満たせない、競合他社に対して優位性を築けない経営環境になってきたのです。

 一方で、経験曲線の考えの要諦は、コスト削減の活動を継続できるかできないかにあります。業務改善の活動が組織の中に埋め込まれているのかそうでないのか、と言い換えてもよいでしょう。簡単にいえば、コスト削減に資する活動が通常業務の中に位置付けられているか、そうでないかという点が重要です。

 経験曲線の教えは、例えば原材料の購入であればその単価を下げる、その使用量を減らすという活動を継続せよ、となります。生産性であれば、単位コスト当たりの生産量を増やすために、生産に直結する活動を見極めてそのスピードを上げ、一方で生産に直結しない非生産活動を減らしていくことが相当します。

コスト削減を長期的に継続させる

 新しい生産モデルを導入するとしても、経験曲線がものをいいます。新しい工場における単位コストの低減は、その工場が積み重ねてきた業務活動の蓄積量に比例します。ですから、組織としての経験を積み上げること、より早く新たな生産モデルに取り掛かって試行錯誤を繰り返すことが成功確率を高めることになるのです。

 よい経験を積み重ねている企業がある一方で、よい経験を積み重ねることができていない企業があるものです。「規模」を生かしたコストダウンに頼るだけでなく、「経験」に裏打ちされたコストダウンにも取り組むこと。このコスト削減に対する考えと行動の差が、結局のところ企業の競争力の源泉となり、組織力の進化に直結するのです。これが経験曲線から学べる点です。

 業務改善活動のプロセス、コスト削減のプロセスを組織の中に埋め込んでください。経験曲線から学べることは、コスト削減を長期的に継続させることにほかなりません。
(文=森秀明/itte design group Inc.社長兼CEO、経営コンサルタント)

森秀明/itte design group Inc.社長兼CEO、経営コンサルタント

森秀明/itte design group Inc.社長兼CEO、経営コンサルタント

一橋大学経済学部卒、慶應義塾大学大学院修了。ボストン コンサルティング グループ、ブーズ・アレン・ハミルトンなどの外資系コンサルティング会社を経て現職。企業や組織への経営コンサルティング活動とともに、経営者へのアドバイザリー業務を行っている。WE HELP COMPANIES CREATE THEIR FUTURE STORIES. がミッション。著書に『外資系コンサルの資料作成術』『外資系コンサルの3ステップ思考術』(ダイヤモンド社)がある。
株式会社 itte design group

Twitter:@ittedesigngroup

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