リーダーとしてどう部下と接し、どのように仕事を任せ、どのように強いチームを作り上げればいいのか。立命館アジア太平洋大学学長の出口治明氏は、部下と接するときに、その部下の言う通りにするという。その理由は「性別も年齢も国籍も、垣根を取り払うことが大事」「多様な人材に任せることでしか、会社は成長しない」と確信しているからだ。
人間の能力は、それほど高くない。大差はなく、何事かを成し遂げようと思っても、一人では何もできない。だからこそ、どんな部下でも信頼して、仕事を任せる。そうして補い合えるチームづくりが重要となる。
『決定版 「任せ方」の教科書』(KADOKAWA刊)では、60歳で起業、70歳で大学学長になった出口氏が、多様な人材を率いて成果を出すために、人間の能力の限界、歴史・古典の叡智、グローバル基準を出発点に、マネジメントの原理原則を紹介する。
「丸投げ」にならない部下への仕事の任せ方
では、どのように任せればいいのか。仕事を部下に任せたあとには「大事なルール」がある。それは、ひとたび仕事の権限を委譲したら、その権限は部下の固有のものであり、上司といえども口を挟むことはできないというものだ。
この権限の感覚を持たない上司は、「任せる」と「丸投げ」の違いがわかっていないという。「任せる」も「丸投げ」も、誰かに仕事を振ることに変わりはない。しかし、その振り方には大きな違いがある。
「丸投げ」は、「何でもいいから、適当にやっておいてくれ」というように、指示があいまいだ。一方の「任せる」は、「君にはこういう権限を与えるので、こういう結果を出してほしい」と、指示が明確で、権限の範囲も明確になる。
たとえば、上司の仕事を代行させるという権限を部下に与えると、部下は自分が部長や課長になったつもりで考えるようになり、視野を広げることにもつながる。そして、その経験は、その後の部下の糧にもなるという。
今まで自分自身が行っていた仕事を部下に任せることは勇気のいることかもしれない。しかし、部下を信頼して仕事を任せ、社会がどのように変化しているかを見極め、変化に適した人材に「任せる」ことがマネジメントの本質と、出口氏は述べる。
どのように人に任せれば、強いチームができあがるのか。リーダーになり、悩んでいる人は、本書から「任せ方」を学んでみてはどうだろう。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。