新型コロナウイルス拡大防止のため、様々な活動に自粛を求められ、窮屈な思いをすることの多い今だが、家にいる時間が長い今だからこそできることもまたある。読書などはその一つだろう。
本をより深く理解するために大切なのが「読解力」。これは、「読むこと」だけでなく、「聞くこと」「話すこと」「書くこと」のベースにもなる。相手の説明を正確に理解できる人や、いわゆる「1を聞いて10を知る」タイプの人は、読解力が優れているとみていいだろう。
■真の読解力を身につけるために必要なこと
『読解力を身につける』(村上慎一著、岩波書店刊)では、「国語」という教科で長く求められてきた、「人生にかかわる読解力」を身につけるための方法を紹介。国語教論として現代文・古文・漢文を教え、現在は愛知県立名古屋南高等学校校長の村上慎一氏が、段落の意味、要約の仕方、評論、実用的な文章、資料やグラフ、文学的な文章など、それぞれの特徴に応じた読解の方法を解説する。
読解力とは、表現者の意図を正確に読み、それを自分の言葉に置き換えて解釈する力のこととされるが、その実態は複雑だ。表現者の意図を読み取るためには、表現者の立場や心情を読み解く想像力と思考力も必要となるからである。
たとえば、「評論文」を読解するにはどうすればいいのか。筆者の意見を自分の言葉に置き換えて解釈する場合、その評論文の「テーマ」「意見」「論拠」の3点セットを踏まえる必要がある。この3つをおさえたうえで評論文を自分の言葉で説明できれば、読解できているといえる。
評論文を読解するためには、「段落」に目をつけてみるといいかもしれない。評論文の場合、一般的に各段落には1つ言いたいことがあって、それによって次の段落の文章が意味をもつ構成になっているからだ。なので、それぞれの段落を把握しながら、単文の短文で頭に収めていく。段落から1つの大切なことを見つけ出す。そして、次の段階で、それぞれの段落の位置、相互関係を考える。その際に、重要な段落を見つけ出すことが、読解のテクニックとなる。
また、文章を読むときに注意しなければいけないのが、「目で追わないこと」。村上氏の授業では、音読するようにしているという。理由は文字を音にしながら、一方で書かれている言葉の意味を理解していくことが大切だからだ。黙読する場合も、頭の中で文章を読む自分の声が聞こえるようにする。目で追うと、上滑りして文章の意味が入ってことがあるので、この点は気をつける必要があるようだ。
読解力を向上させることで、想像力や思考力も養われるので、小説を読む場合もより注意深い読者になることができるだろう。さらに、実用的な文章や資料を読み解く力を養うことで「1を聞いて10を知る」タイプの人になれるかもしれない。様々な場面で有用な読解力を本書から身につけてみてはどうだろう。
(T.N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。