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山崎元「耳の痛い話」

銀行・証券会社が、高齢者の金融資産を勝手に売買し巨額損失を与える被害が蔓延

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ご両親のお金を「真面目な金融マン」から守ってください


「Thinkstock」より
 先日、ある講演会に講師として招かれた際に、別の講師から控え室で聞いた話に考えさせられた。この方は、もともとは日系大手証券会社の投資調査部門の出身者で、長く外資系証券会社に勤めて、その後に独立された方で、筆者よりも少し年上だ。

 彼のご両親は、その日系大手証券に証券口座を開いて、国債を購入していたのだという。ところが最近、彼が両親の証券取引口座の中身を見ると、高齢者に必要だとも理解が可能だとも思えない手数料の高い投資信託が何本も並んでおり、しかも勝手に売買されていたようだという。ご両親は、息子が以前勤めていた会社でもあり、担当者を信頼していたのだろう。取引口座の中にある商品については、詳しく理解していない様子だったという。

 他方、近年はコンプライアンス(法令遵守)がうるさいので、証券会社の担当者は顧客がリスクの説明を受けて納得したことや、手持ちの投資信託を売却して別の投資信託に「乗り換える」売買が顧客の自発的な意思に基づくこと等に関して、顧客自身による署名と捺印のある書類を整える等の手続きを十分踏んでいたことだろう。つまり、売買は証券会社側で勝手に行われていたようなのだが、あとから訴訟に及んでも、投資家側に勝ち目はないだろう。

 その講演会の講師は結局、両親の口座の商品をすべて換金して資金を引き出し、取引口座を解約したのだという。自分のいわば古巣に対して、複雑な感情を抱いたであろうことは想像に難くない。

 実は、筆者の父親は今年89歳で、もう金融的な判断を自分で行うことは難しいが、先日介護施設に入った彼の証券取引口座の明細を見ると、残高の4分の1くらいが「通貨選択型」と呼ばれる毎月分配型の手数料の高い投資信託で占められていた。息子である筆者が、「これを買ってはいけない」「持っていたらすぐに解約して構わない」と日頃から言っている商品を、彼が中身まで理解して買ったのだとは思わないが、今よりももう少し元気だった頃に証券会社の担当者に勧められて「付き合って」しまったのだろう。

銀行員は決してお金を任せていい相手ではない


 日本では、多額の金融資産を持っている人の多くが高齢者だが、彼らの資産が適切に管理されているかどうかは、極めて心許ない。

 危険な相手は証券会社ばかりではない。「週刊朝日」(11月13日号/朝日新聞出版)に、『認知症患者を食い物にする「ハイエナ」金融機関』と題する記事が掲載されているが、この記事に登場する2008年に認知症と診断された女性は、12年に司法書士の後見人が付くまでに、取引していた信託銀行で投資信託や新興国の国債などで40回も売買を繰り返し、資産の約半分である1億円ほどの損失を被り、この信託銀行は1500万円以上の手数料を得ていたという事例が紹介されている。