2018年12月25日付・米BUSINESS INSIDER記事『Mariah Carey has already earned over $60 million from ‘All I Want for Christmas is You’』によれば、米国のシンガー、マライア・キャリーはクリスマスソング「All I Want For Christmas Is You」によって年間で数百万ドル、日本円で約1億5000万円以上(現在の為替レート)のロイヤルティ収入を得ていると推定できるという。ちなみに2017年時点で、マライアは同曲だけで約6000万ドル(約94億円)のロイヤルティ収入を得たと報道されている。日本にも毎年、自然と耳に流れてくる有名クリスマスソングは少なくないが、アーティストたちにもたらされる印税収入はどれほどなのか。
『恋人たちのクリスマス』という邦題で知られる同曲は、日本では1994年にフジテレビ系で放送された大ヒット連続テレビドラマ『29歳のクリスマス』(出演:山口智子、柳葉敏郎、松下由樹ほか)の主題歌として起用され、シングルCD売上枚数が100万枚を超えるミリオンセラーとなった。同曲が収録されたアルバム『Merry Christmas』は、国内だけで280万枚、全世界で1400万枚の売上を記録。リリースから30年たった現在でも、12月になるとあらゆる場所でメロディーを耳にするほどの定番曲となっている。
本当に稼げなくなってきている日本のアーティストたち
日本の楽曲にも定番のクリスマスソングは少なくないが、アーティストにもたらされる収入はどれくらいなのか。契約形態にもよるが、一般的にアーティストには楽曲の売上に応じて、いわゆる歌唱印税といわれるアーティスト印税が1~3%程度、作詞・作曲者にはそれぞれ1.5%ずつが支払われる。
「いまやミュージシャンという職業は、ほんの一握りの人気アーティストを除けば、本当に稼げなくなってきています。そこそこ売れているアーティストの年収を聞けば、おそらく一般の人は『それしかもらっていないのか』と驚くレベルでしょう。業界全体でアーティストの権利と収入を守ろうという機運は強いものの、音楽の聴かれ方がCDから徐々にApple MusicやSpotifyなどのネット配信サービス(サブスクリプションサービス)に移行するのに従い、理由はよくわかりませんがアーティストに入るおカネが減ってきています。そのため、現在では楽曲の印税以外のところ、ライブなどでいかに稼ぐのかという方向になっています。ちなみに収入面で意外に大きいのがカラオケ印税。一曲歌われることに作詞・作曲者に著作権印税が支払われ、往年のヒット曲によって毎年多額のカラオケ収入を得ているアーティストも結構います」(レコード会社関係者)
過去30年ほどの間で音楽市場は大きく縮小した。日本レコード協会の公表データによれば、1998年にはほぼ音楽ソフト(CD・DVDなど)だけで年間6000億円以上の売上があったが、ここ数年は音楽ソフトと音楽配信の合計で約3000億円まで減少。23年は音楽ソフトが約2207億円で、音楽配信が1165億円の計3372億円。CD・DVD離れが指摘されているが、現状では音楽ソフトのほうが売上は大きい。
では、国内のアーティストがクリスマスソングで多くの収入を得ているケースはあるのか。
「商業店舗でよく流されている、原曲をアレンジした歌唱なしのBGM曲でも、使用されれば作曲者には印税が支払われるので、特に作曲も手掛けているアーティストであれば収入を得られることになります。ですが、日本でクリスマスソングで一定の規模の印税収入を毎年得ているアーティストというのは、10人はいないと思われます」(同)
(文=Business Journal編集部)