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なぜシャトレーゼは加盟店が儲かるのか?“ロイヤリティなし”経営の構造分析

2026.05.28 06:00 2026.05.27 19:18 企業
文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=田辺晃成/経営コンサルタント
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シャトレーゼ本社工場(「Wikipedia」より)

●この記事のポイント
シャトレーゼは「ロイヤリティ0%」という異例のFCモデルを武器に、2025年3月期売上高1,613億円、国内外1,000店舗体制へ急拡大した。利益源はSPA型の製造・物流一体運営による卸売マージンにある。一方で、工場稼働遅延による外国人労働者問題や下請法勧告も発生。急成長を支える供給網とガバナンス強化が次の成長局面の焦点となっている。

●目次

「ロイヤリティ0円・加盟金実質ゼロ」でも儲かる仕組みの正体

 2024年1月、和洋菓子大手のシャトレーゼ(山梨県甲府市)は国内外1,000店舗目となるフランチャイズチェーン(FC)店を横浜市にオープンさせた。直近では年間100店を超えるペースで店舗網を広げており、売上は2019年3月期の662億円から2023年3月期には1,327億円へと5年で倍増している。さらに2025年3月期の連結売上高は1,613億円に達した。

 この急成長を支えるFCモデルの最大の特徴は、ロイヤリティ(加盟金ランニングフィー)を徴収しないという点だ。セブン-イレブンは粗利益の43〜76%の定率制チャージを採用しており、高い場合は70%に達することもあるのに対し、シャトレーゼは加盟店から売上の一部を徴収しない。この数字の差は、加盟店経営者にとって死活問題に等しい。

 では、本部はどこで利益を得るのか。

 答えは「製造マージン」にある。シャトレーゼは農家との直接契約から製造・物流・販売まで一貫して自社で完結させるSPA(製造小売)モデルを採用しており、問屋・卸業者が介在しない。問屋を通さない工場直売店を1985年に実験的に出店したことが好評を博し、翌86年から全国展開が始まった。本部は商品を加盟店に「卸す」ことで利益を確保し、加盟店は低い仕入れコストで高い利益率を維持できる。ロイヤリティという「上納金」の概念そのものが不要な収益構造が成立しているのだ。

 FC・フランチャイズビジネスの実務に精通するコンサルタントはこう解説する。

「一般的なFCは本部がブランドとノウハウを提供し、加盟店から定期的なロイヤリティで収益を得ます。シャトレーゼの場合、収益の源泉がロイヤリティではなく製品の卸売マージンです。本部が製造能力を維持しさえすれば、加盟店が増えるほど卸売収入が増加するため、スケールメリットが本部・加盟店双方に作用する設計になっています」(経営コンサルタント・田辺晃成氏)

広告費ゼロに近い「素材への再投資」が口コミを生む

 コスト競争力の源泉はもう一つある。シャトレーゼはテレビCMをほとんど打たない。大手食品メーカーは売上高の数%を広告宣伝費に充てるのが一般的だが、シャトレーゼはその分を原材料費と素材開発に振り向ける。「安いのに美味しい」という顧客体験そのものが最大の集客装置となり、口コミが新規顧客を呼ぶ好循環を生み出している。

 この構造は加盟店オーナーのモチベーション設計とも連動している。ロイヤリティが0%であれば、売れば売るほど自店の利益が積み上がる。過剰な廃棄ロスにさえ気をつければ、接客や品揃えへの自発的な工夫が直接オーナーの収益に反映される。「本部のために売る」ではなく「自分のために売る」という動機付けが、チェーン全体のサービス品質を底上げする効果がある。

 シャトレーゼが体現するのは、創業者・斉藤寛氏が掲げた「三喜経営」——顧客・取引先・社員の三者が喜ぶ経営——という理念だ。FCオーナー(取引先)が儲かる仕組みを先に担保することで、本部のプラットフォーム(製造・物流網)が自ずと拡大するという逆転の発想は、現代のプラットフォームビジネスの文脈でも示唆に富む。

急拡大が照らし出した「工場依存」の構造的リスク

 しかしながら、このモデルにはアキレス腱がある。「商品を工場からフル稼働で店舗へ流し続けること」が絶対条件だという点だ。ロイヤリティではなく卸売マージンで収益を得る以上、工場が止まれば本部収益もそのまま止まる。

 シャトレーゼは2024年中に岡山県、山形県、鹿児島県の3カ所で新工場を稼働させると発表しており、国内の生産拠点はグループ会社を含め13カ所となる見通しだ。積極的な工場投資の裏側には、店舗網急拡大に対する供給能力の逼迫という現実がある。

 工場稼働遅れが人事面の問題に直結した事例も起きている。特定技能の在留資格を持つベトナム人労働者88人が、山梨県の新工場の全面稼働遅れを原因として、約2カ月半にわたり無給で待機させられ、休業補償が支給されていなかったことが発覚した。その後、出入国在留管理庁からシャトレーゼに改善命令が下された。

 さらに2025年3月には、公正取引委員会より下請代金支払遅延等防止法(下請法)に基づく勧告を受けた。包装資材などを製造委託した11社分・約2,383万円分を正当な理由なく受け取らず、うち約1,300万円相当は発注から1年以上受領されないまま下請け業者の倉庫に滞留していた。古屋勇治社長は「下請法に関する知識の不足、並びにリスクの抑制・モニタリングの不備に起因するものと大変重く受け止めている」とコメントしている。

「急速な多店舗展開の過程では、生産・調達・人事の各部門が同時に過負荷に陥りやすい。SPAモデルは一貫管理の強みがある反面、どこか一点でボトルネックが生じると全体に波及しやすい。外部のチェック機能を強化し、ガバナンスと拡大スピードのバランスを取ることが次のステージへの課題です」(同)

 なお2025年7月時点で、シャトレーゼは新規FC加盟の募集を停止している。急拡大路線を一時的に引き締め、サプライチェーンと内部管理体制を整備するフェーズに入ったとも読める。

「三喜経営」の持続性が問われるフェーズへ

 シャトレーゼの強みは、単一の施策によるものではない。製造・物流・販売・人材育成が「三喜経営」という一つの哲学で一気通貫していることにある。加盟店が「ロイヤリティを払わなくて済む」という表層的な事実の背後には、本部が工場とサプライチェーンへの継続投資を怠らないことで初めて成立するエコシステムがある。

 その証拠に、近年の課題はいずれも「製造インフラの整備が店舗拡大に追いつかない」ことに集約される。外国人労働者の処遇問題も、下請け企業への対応問題も、根幹には供給能力のひっ迫と管理体制の遅れがある。

 創業70周年を迎えた2024年に1,000店舗の節目を達成したシャトレーゼが、次の2,000店舗に向けて何を優先すべきかは明確だ。SPAモデルの恩恵を加盟店・顧客・取引先に持続的に還元するには、急拡大を支えるだけの製造インフラの整備と、それを正しく機能させるガバナンスの強化が不可欠だ。「三喜経営」の精神が、取引先への誠実な対応にも貫かれているかどうかが、今まさに問われている。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=田辺晃成/経営コンサルタント)

公開:2026.05.28 06:00