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中国で日本車3社そろって前年割れの深層…ホンダ生産能力半減、日産5千億円赤字

2026.07.14 06:00 2026.07.14 00:14 企業
文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=荻野博文/自動車アナリスト

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●この記事のポイント
中国新車販売で日本車3社が前年割れ(トヨタ▲17.1%、日産▲15.0%、ホンダ▲34.7%)。ホンダは生産能力を173万台から72万台に半減、日産は最終赤字5331億円。一方トヨタは営業収益50兆円突破。「知能化」で出遅れた日本車の明暗を財務データで検証する。

 日本の自動車大手3社が7月10日、2026年1〜6月期の中国新車販売台数を出そろって公表した。トヨタ自動車が前年同期比17.1%減の69万4700台、日産自動車が15.0%減の23万7018台、本田技研工業(ホンダ)が34.7%減の20万5818台。3社の合計は113万7536台で、前年同期から2割減少した。中国自動車工業協会(CAAM)によれば、6月単月の中国新車販売全体は前年同月比3.2%減の281万台にとどまっており、市場全体の落ち込み幅を上回るペースで日本車のシェアが失われている構図が浮かび上がる。単月で見ても、6月はトヨタが5カ月連続、日産が3カ月連続のマイナスで、ホンダに至っては29カ月連続の前年割れとなった。

 これは一時的な「買い控え」では説明がつかない。かつて「壊れない」「リセールバリューが高い」という信頼で圧倒的な地位を築いた日本車が、中国の消費者の意識の中で急速に存在感を失いつつある——そう捉えるべき局面に来ている。

●目次

なぜ急激に低迷したのか…「知能化」に乗り遅れた代償

 背景にあるのは、中国市場そのものの構造変化だ。ガソリン価格の高騰や、電気自動車(EV)など新エネルギー車(NEV)向け税優遇措置の縮小が国内需要そのものを冷え込ませており、市場環境自体が厳しさを増している。

 しかしそれ以上に大きいのが、車に求められる価値の変化だ。現地メーカーが強みとするのは、大型ディスプレイやスマートフォン並みのOS、高度な運転支援システムといった「知能化」領域である。エンジン技術やハイブリッド機構で優位を築いてきた日本車にとって、この土俵では従来の強みがそのまま通用しない。ホンダ自身も、中国での知能化・電動化対応の遅れが苦戦の要因になっていると説明している。

 自動車アナリストの荻野博文氏は次のように指摘する。

「中国の消費者、特に若年層にとって、車はもはや『移動手段』ではなく『生活を支えるデバイス』になっている。燃費や耐久性を磨き込んできた日本車の技術的な強みは、需要そのものがシフトしてしまった以上、評価軸として機能しにくくなっている。これは短期的な販売不振ではなく、ブランドが体現してきた価値そのものが問い直されている局面だ」

財務に刻まれた明暗…ホンダ・日産の構造改革とトヨタの防波堤

 中国市場の急変は、3社の財務に全く異なる形で表れている。

 ホンダは2023年に年間120万台規模を売り上げていた中国販売が、2025年には前年比24.3%減の64万5000台程度まで急落。これを受け、広汽ホンダのガソリン車工場を2026年6月に、東風ホンダの工場を2027年に休止する方針を進めており、中国全体の生産能力はピーク時の173万台規模から72万台へと半分以下に圧縮される見通しだ。四輪電動化戦略の抜本的な見直しに伴い、2026年3月期から27年3月期にかけて最大2兆5000億円規模の損失計上を余儀なくされている。

 日産はさらに深刻だ。経営再建計画「Re:Nissan」のもと、世界の車両生産拠点を17から10へ、人員を約2万人削減する大規模なリストラを進めている最中にある。2026年3月期の連結最終損益は約5331億円の赤字となり、前期の6708億円の赤字からは縮小したものの、2期連続の巨額赤字を計上した。米関税の負担や中国事業の不振が、リストラによるコスト削減効果を打ち消す形になっている。

 一方のトヨタは、2026年3月期に営業収益で日本企業として初めて50兆円を突破し、5年連続で過去最高を更新した。米関税の影響で営業利益は前期比21.5%減の3兆7662億円、純利益は19.2%減の3兆8480億円と減益にはなったものの、3兆円台後半の利益水準を維持している点で他の2社とは一線を画す。

トヨタを支える「マルチパスウェイ」という防波堤

 トヨタが中国での苦戦を抱えながらも高水準の利益を確保できている理由は、EVに一本化せずハイブリッド車(HV)を含む全方位の技術を磨き続けてきた「マルチパスウェイ」戦略にある。同社は北米や欧州でハイブリッド車の販売が好調だったことを増益要因の一つに挙げており、2026年3月期のトヨタ・レクサスの電動車販売のうちHVは462万台と前年比4.4%増、電動車比率は48.1%に達した。近健太社長も、販売台数が伸びていく中でその大半をハイブリッド車が支えていると説明している。

 中国市場での落ち込みを、北米をはじめとする他地域の稼ぎで相殺できる「グローバルな稼ぐ力の分散」こそが、トヨタと他2社を分けた最大の要因だといえる。

「トヨタの強さは、特定の技術や地域に賭けなかったことに尽きる。EVシフトの勢いが世界的に鈍化する局面で、ハイブリッドという『保険』を持っていたことが結果的に功を奏した形だ。ただしこれは中国での構造課題を解決したわけではなく、あくまで他地域の収益で穴を埋めているに過ぎない点は注意が必要だ」(荻野氏)

日産の賭け…中国を「輸出拠点」に変える大転換

 苦境の中、日産は独自の反転策を打ち出している。2026年4月の北京国際モーターショーで、エスピノーサ社長は中国で開発・生産した車両を将来的に年間30万台規模で輸出する方針を表明した。すでにEVセダン「N7」やPHVピックアップトラック「フロンティアプロ」を東南アジアや中南米、中東向けに輸出し始めており、中国を単なる巨大市場としてではなく、開発スピードとコスト競争力を備えた「グローバルなイノベーション・輸出ハブ」として再定義する狙いだ。

 この戦略には勝算とリスクが表裏一体で存在する。中国の開発スピードを取り込めれば、価格競争力のある電動車を他地域に展開する武器になり得る一方、輸出先の通商政策や地政学リスクの変動によって経営全体が振り回される可能性も否定できない。実際、日産のグローバル戦略は、米国の関税政策の影響をすでに強く受け続けている。

「次なる戦場」への教訓

 中国市場での逆風は、日本車にとって対岸の火事ではない。同様の「知能化」を武器とする中国メーカーは、東南アジアなど日本車が伝統的に強い市場への攻勢も強めつつある。逃げ切りが許されない状況の中で、各社がどのようなスピードで変化に適応できるかが、今後の明暗を分けることになるだろう。

 トヨタの分散型の稼ぐ力、ホンダの生産体制の再構築、日産の中国発グローバル輸出という賭け——アプローチは三者三様だが、いずれも「これまでの成功体験からの脱却」を迫られている点では共通している。日本のものづくり産業全体にとって、この局面から何を学び取るかが問われている。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=荻野博文/自動車アナリスト)

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公開:2026.07.14 06:00