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低所得層に現金を配る政策はそろそろやめるべき…「一億総活躍社会」という妄言

文=真壁昭夫/信州大学経済学部教授
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低所得層に現金を配る政策はそろそろやめるべき…「一億総活躍社会」という妄言の画像1新3本の矢(「首相官邸 HP」より)

 11月26日に政府が発表した「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策」(以下、一億総活躍社会)は、安倍政権の第2弾の経済政策の中心的なコンセプトといえる。

 第1弾のアベノミクスは金融政策を重視しつつデフレ脱却を目指した。今回の対策は、経済の前向きな動きをより強力に推し進め、全国津々浦々、国民一人ひとりに成長の恩恵を届けることを目指している。

 ただ、この政策の内容は表現の違いはあれ、歴代の政権が主張してきたことと大差ない。市場に驚きを与え、期待を高めるような内容ではないといえる。また、成長率の引き上げは中長期的な取り組みだ。それを、短期的な経済対策として進めようとしている点にも、やや違和感がある。わが国の生産年齢人口が減少する中、企業はひたむきに技術を磨き、イノベーションを進めるしかない。政府は企業の活動を支えつつ、海外の活力を呼び込むために市場開放、規制緩和などを積極的に進めるべきだ。

新3本の矢

 政策の根幹をなすのが“新3本の矢”だ。具体的には、(1)希望を生み出す強い経済(名目GDP600兆円)、(2)夢をつむぐ子育て支援(出生率1.8)、(3)安心につながる社会保障(介護離職ゼロ)である。

 端的にいえば、新3本の矢は国内での消費や家計の行動を重視している。典型的な例として、給付の支給などが記されている。わが国のGDP成長率が2四半期続けてマイナスに陥り、回復の動きには足踏み感が出ている。そのため、政府は金融政策に依存してきた第1弾のアベノミクスに加えて新しい政策を提示することで、先行きへの期待をつなぎたいはずだ。ただ、考えるべきは所得の低い家計に現金を配ることよりも、どのようにして彼らに前向きに行動するインセンティブを付与できるかだろう。

 また、600兆円規模の経済を目指すのであれば、首都圏だけでなく地方での暮らし、産業育成、企業誘致など、これまでの政策、地方分権を見直す必要も出てくる。それは長期的な取り組みであるはずだ。にもかかわらず、政府は一億総活躍社会の創出を緊急のテーマとして扱っている。その具体的な内容も、これまでに議論されてきた点が多い。そのため、政策の妥当性、持続力には疑問符が付きまといやすい。

 では、市場はこの対策をどう見ているのか。株式市場の動きを見ると、一億総活躍社会への期待が株価を押し上げているとはいいづらい。市場を支えているものは日銀による異次元の金融緩和だ。そして金融政策は実体経済の強化にはつながらない。先行きも、景気が落ち込めば追加緩和への期待は高まりやすい。それは中長期的な成長力の強化にはつながらない可能性がある。追加緩和はやるべきではない。

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