フランスは「男女平等」を促すため11年、上場企業に対し17年までに役員の「40%」を女性とするよう法律で義務付けた。フランスのルノーと提携している日産は、背中を押されるかたちで女性の管理職登用を重視してきた。日産も管理職女性比率を現在の7%から17年には10%に引き上げる方針を打ち出している。しかし、日産には現在、女性取締役はおらず、会見でゴーン氏は「日産にとって、17年3月までに10%という目標が現実的だ」と語り、政府目標の30%に疑問を投げかけた。
6月に発表された政府の「『日本再興戦略』改訂2014」で、女性の活動促進と働き方改革が明示され、「2020年に指導層に占める女性の割合を30%」とする数値目標が掲げられた。この政府目標は安倍晋三首相が今年1月、世界経済フォーラム年次会議(ダボス会議)で語ったものだ。
日本企業における女性登用は遅れているとされ、経済協力開発機構(OECD)によると、上場企業役員に占める女性の割合は、米国が12%、フランスが18%なのに対し、日本は3.9%にとどまる。また、日本企業において管理職に占める女性の割合が10%に満たない企業が81.1%で、うち「ゼロ」と答えた企業が51.5%と過半数を占めている。さらに、今後、女性管理職の割合が「増加する」との回答は20.9%にとどまり、「変わらない」が61.0%と最も多かった(以上、帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査」より、回答企業数:1万1017社、回答率:46.9%)
●女性登用先進国、ノルウェーの事例
ノルウェーは首相と財務相が女性であり、女性登用先進国として知られている。ノルウェー経済界で最も重要な役職といわれている雇用主組合(日本の経団連に当たる)と労働組合連合会のトップも女性だ。03年の会社法改正により、上場企業の取締役会における女性の割合を40%以上とすることが義務づけられたことが、女性登用が企業に広がる契機となった。
だが、女性登用の成功例として取り上げられている一方、副作用のほうが大きかったという指摘もなされている。米・南カリフォルニア大学のケネス・アハーン助教と米ミシガン大学のエイミー・ディットマー準教授は、ノルウェーの40%割当制について実証分析を行った。対象は01~09年の上場企業248社。
まず、03年に40%割当制の導入が決定すると、対象企業の株価は大幅に下落し、その後、数年間で女性役員比率が10%増加したことで時価総額は12.4%下落したという。負債等も大きくなり、営業成績にも悪化が見られたという。さらに、同制度の対象となるのを避けるため、09年の上場企業数は、01年から約3割減った、つまり非上場企業に転換した会社が約3割増えたという。
企業のモラルハザード(経営倫理の欠如)も招いた。確かに上場企業の取締役会は女性役員が40.7%を占めているが、数合わせのために女性の社外取締役を増加させる事態が横行し、実際に経営に携わる女性役員は6.4%にすぎないともいわれている。
前述の通り政府は女性登用を重要政策として掲げているが、具体的な数値目標を掲げる上では、経済全体にどのような影響を与えるのか、正負両面から十分な議論が必要といえよう。
(文=編集部)