これらの加工食品の中で、化学調味料や食品添加物を使っていないものはどれほどあるでしょうか。
スーパーマーケットの食品売り場やコンビニなどで、食品の原材料を見てみると、化学調味料を使用していない商品を探すことは極めて困難です。
化学調味料は摂らないに越したことはありませんが、極少量であれば健康被害の可能性が低いものも多いので、過敏になる必要はないのかもしれません。しかし、たとえ一食に含まれる量がわずかであっても、摂取するあらゆる食品に化学調味料が含まれていれば、無視できないほどになる可能性があります。
また化学調味料は、健康被害だけではなく味覚にも大きな影響を及ぼしています。アミノ酸などのうまみ調味料が普及したため、昔ながらの日本料理店など一部を除いて、外食産業、弁当、加工食品のほぼすべてに化学調味料が使われるようになりました。
元来、日本人の舌は世界でも最も鋭敏であるといわれてきました。昆布ダシのグルタミン酸などのうまみや、白身魚の味などは、先天的に欧米人は感じ取ることが困難とされ、そのような繊細な味を日本人は大切にしてきました。
「化学調味料不使用」でもNG!
しかし最近の日本人は、和食で本来ベースとなる昆布、かつお節、干ししいたけなどでつくったダシのうまみを感じ取ることができなくなってきていると指摘されています。その原因が化学調味料にあると考えられるのです。
人の舌は、濃い味に慣れると、それより薄い味のうまみを感じ取ることができなくなります。そのため、さらに濃い味を求めるようになるのです。このスパイラルは、意識して引き戻さなければ、どんどん進行していきます。
試しに、昆布を一晩浸した水を舐めてみて、そのうまみを感じ取ることができるか確認してみてください。それをおいしいと感じられなければ、あなたの舌は化学調味料に汚染されている可能性があります。
その場合、化学調味料などを使用しない料理を自宅でしばらくつくって食べてみてください。多くの場合、一週間ほどで舌の感覚は戻ってきます。塩分過多の人も同様です。濃い塩味やしょうゆ味に慣れている場合、ダシだけで味付けした料理は薄くてまずいと感じますが、しばらく続けると味がわかるようになってきます。
化学調味料は、極少量でも食品に加えると非常に強いうまみを出します。健康被害がない程度の量しか入っていない、と食品メーカーや販売者は言うでしょう。しかし、その強いうまみゆえに、日本人が本来持っている繊細な味覚は破壊されていくおそれがあります。
化学調味料は、加工食品だけでなく、お菓子にも「アミノ酸等」として添加されています。また、「化学調味料不使用」と記載されていても、「たんぱく加水分解物」「酵母エキス」など、人工的に生成された調味料が使われていることもあります。これらも極めて強いうまみを出します。
和食は、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。日本食の持つ繊細で優しい味を受け継ぐためにも、そのおいしさを感じ取ることのできる舌を大切にしたいものです。
今の時代においては、まったく化学調味料を摂取しないことは困難ですが、意識して減らすようにし、たまには自宅でダシを取るところから料理してみてはいかがでしょう。
(文=豊田美里/管理栄養士、フードコーディネーター)