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小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」

債務残高(対GDP)、いずれ360%で財政持続不可能か…財政再建目標の修正に潜むワナ

文=小黒一正/法政大学経済学部教授
債務残高(対GDP)、いずれ360%で財政持続不可能か…財政再建目標の修正に潜むワナの画像1「Thinkstock」より

 政府・与党は、2020年度のプライマリー収支(PB)黒字化を財政再建目標に掲げているが、内閣府が今年1月に公表した中長期試算では、以下の図表の通り、高成長の楽観的なケースで、消費税率を10%に引き上げても、20年度PBは約8.3兆円の赤字となり、目標達成は厳しい状況である。

債務残高(対GDP)、いずれ360%で財政持続不可能か…財政再建目標の修正に潜むワナの画像2

 このような状況のなか、6月9日の臨時閣議で、政府は「骨太方針2017」を決定した。今回の骨太方針の大きな特徴のひとつは、財政再建目標の微修正を行い、「20 年度までに基礎的財政収支(PB)を黒字化し、同時に債務残高(対GDP)の安定的な引下げを目指す」旨の表現に変更したことである。

 従来の骨太方針における財政再建目標は、「20年度までにPBを黒字化し、その後の債務残高(対GDP)の安定的な引き下げを目指す」旨の表現で、このうち「その後の」という文言を今回では「同時に」に修正した。

 すなわち、今回の骨太方針では、「PB黒字化」と「債務残高(対GDP)の引下げ」を併記した。一般的には、PB黒字化よりも、債務残高の引き下げのほうが難しいイメージがある。このため、今回の修正では、財政再建により踏み込んだ印象を与えるが、それは甘いかもしれない。

政治的な意図

 そこで、6月10日付日本経済新聞朝刊記事「識者はどうみる」において、一部抜粋であるが、私は次のようなコメントを掲載した。

<「経済成長すれば財政目標の達成に近づく「債務残高対GDP比」を採用したのは、従来から掲げている「国と地方の基礎的財政収支(PB)の2020年度の黒字化」の目標の達成が厳しくなっているためだろう。債務残高GDP比は、経済対策を打てば、一時的にGDPが拡大して財政目標達成に近づく。財政規律を緩める面がある。歳出削減の圧力が働くPB目標は来年度以降も維持すべきだ。日銀の異次元緩和で金利を低く抑制できる状況が、財政規律の議論を先延ばしにさせている。金利が上昇局面に向かう前に、社会保障改革を断行して歳出削減と財政再建を進めないといけない」>

 このコメントの内容をもう少し詳しく説明すると、次の通りである。

 まず、債務残高(対GDP)は、「金利<成長率」の状況が続けば、一定のPB赤字があっても、縮小する可能性がある。このため、日銀が量的・質的金融緩和(QQE)で金利を低水準に抑制している状況で、借金による補正予算でGDPを押し上げ、債務残高(対GDP)を一時的に縮小しようという政治的圧力を強めてしまう。

小黒一正/法政大学教授

小黒一正/法政大学教授

法政大学経済学部教授。1974年生まれ。


京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。


1997年 大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。財務省財務総合政策研究所上席客員研究員、経済産業研究所コンサルティングフェロー。会計検査院特別調査職。日本財政学会理事、鹿島平和研究所理事、新時代戦略研究所理事、キャノングローバル戦略研究所主任研究員。専門は公共経済学。


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Twitter:@DeficitGamble

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