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麻布台ヒルズ、ガラガラで廃墟化?森ビルの誤算、超高層ビルは時代遅れに

文=Business Journal編集部、協力=牧野知弘/オラガ総研代表取締役
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麻布台ヒルズ(「Wikipedia」より/Syced)

 昨年11月に開業した東京・港区の麻布台ヒルズ。大手ディベロッパー・森ビルが計画着手から30年以上、総事業費6400億円をかけて開発を進め、満を持してオープンに至った大型商業施設だが、人がまばらでガラガラの光景が目立つとして一部で話題となっている。廃墟と化してしまう懸念はあるのか。また、麻布台ヒルズの将来をどう読むか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 六本木一丁目駅と神谷町駅に挟まれ、麻布通り、外苑東通り、桜田通りに囲まれる港区・虎ノ門5丁目、麻布台1丁目・六本木3丁目のエリア一帯は、細分化された敷地に小規模かつ老朽化した木造住宅やビルが密集し、細い道路が入り組み高低差が激しく、都心のなかで“ポツンと取り残された地域”だった。

 そこに大規模な商業施設を開発する計画を立ち上げたのが森ビルだった。1989年に「街づくり協議会」を設立して多数の権利者との協議を進め、2019年8月に着工。計画着手から30年以上の時を経て昨年11月に開業にこぎつけた。

「Green」と「Wellness」を2本柱とする「Modern Urban Village」をコンセプトとして掲げ、豊富な自然を重視。約6000平方メートルの中央広場を含む約2.4ヘクタールの緑地を擁する敷地内に、3棟の超高層タワー(1棟は建設中)、4棟の低層建物がたつ。ショップや飲食店などの各種商業施設、オフィスフロアのほか、世界最高級ホテルブランド「アマン」が手掛ける居住エリア「アマンレジデンス東京」、アマンの姉妹ブランドホテル「ジャヌ東京」、チームラボが手掛ける「森ビル デジタルアート ミュージアム」のほか、慶應義塾大学予防医療センター、外務省外交資料館展示室、インターナショナルスクールのブリティッシュ・スクール・イン・東京などもある。

 森ビルは、麻布台ヒルズの就業者数は約2万人、居住者数は約3500人(住戸数1400)、年間来街者数は約3000万人と見込んでいるが、SNS上では「休日でもガラガラ」といった声が目立ち、施設としての将来性を不安視する声も聞かれる。近隣のオフィスに勤務する40代男性はいう。

「低層建物のガーデンプラザ内に高級ブランド系のショップが並ぶエリアがあるが、確かにガラガラのときが多いようだ。一方、一番高いビルの森JPタワーの低層階(タワープラザ)のほうは、時間帯によってはそこそこ人がいる。上層階にあるオフィスフロアの人たちも使っていると思われる。近くにある同じ森ビルの六本木ヒルズや虎ノ門ヒルズもそうだが、そもそも麻布台ヒルズは観光や普段の買い物の目的で行くような場所ではないので、観光客が少ないのは当然だろう。主な利用者はオフィスのワーカーか居住エリアの住人ということになるが、それならばなぜ高級ブランドなどが入っているのか。

 食品店が集まる麻布台ヒルズマーケットや飲食店はとにかく高額な店ばかりで、とても庶民が楽しめるとは思えない。『いったい、どういう人たち向けの商業施設なのか』という疑問を感じるし、多くのリピート客をつかめるとも思えない」

集客に苦戦している2つの理由

 麻布台ヒルズの現状について、不動産事業のコンサルティングを手掛けるオラガ総研代表取締役の牧野知弘氏はいう。

「不動産業界内で麻布台ヒルズが苦戦しているという話が流れているのは確かです。集客に苦戦している理由としては大きく2つが考えられます。まずロケーションという面では、神谷町駅の周辺には外資系企業のオフィスが多いものの、わざわざ買い物をしに行くというイメージを一般の人々が持ちにくいエリアであり、地形的に高低差が大きい場所でスロープを上り下りしながら店舗を回って買い物をしたいと考える人は多くはないでしょう。

 また、開発コンセプト面では、現在の日本人が置かれた経済環境を前提とすると、高級ブランド店をたくさん集めた商業施設というのは一般消費者にヒットしにくいです。富裕層も、特に今の若いセレブリティの趣味・嗜好は多様化しており、似たような高級ブランド店が立ち並ぶ場所に行こうとはなりにくい。インバウンド(外国人観光客)にとっても、平面的な空間のなかでバラエティーに富むさまざまな店舗や飲食店に交じって世界中のブランドショップも立ち並ぶ銀座のほうが魅力的でしょうし、ドン・キホーテのような日本独自の店があり繁華性に富む渋谷・新宿・池袋のほうが好まれるでしょう。中国をはじめとするアジアからの観光客も、団体でバスで乗り付けて爆買いするという時代はとうに過ぎ去り、今では個人旅行客が中心となっているため、麻布台ヒルズのような商業施設に行こうという動機は生まれにくいです」

超高層ビルを主体とする商業施設はオワコン化

 一般客向けの商業エリアに人が少ないとしても、オフィスエリアや住居エリアが埋まっていれば、施設全体としては問題ないとも考えられるが、麻布台ヒルズの将来はどのように予測されるか。

「オフィスフロアもまだ埋まらず空きがあるようでテナント集めに苦戦している様子ですが、超高層ビルを主体とする商業施設というものが、ここ数年で限界を迎えてオワコン化しつつあるという印象を受けます。今から約20年前の2000年代初頭に開業した六本木ヒルズは、勢いのあるIT企業や外資系企業がこぞって入居し、六本木ヒルズレジデンスに住むことがセレブたちにとってステータスとなるなど、非常に意義のあるコンテンツであったことは間違いなく、不動産業界全体がワクワクしてその動向を注視していました。ですが20年が経過した今、同じようなコンセプトの商業施設は時代遅れとなってしまいました。以上を踏まえると、麻布台ヒルズの将来は、今のままでは非常に厳しいといえるのではないでしょうか」

(文=Business Journal編集部、協力=牧野知弘/オラガ総研代表取締役)

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にも関わり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。
オラガ総研株式会社

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