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東京ガールズコレクション、栄光と過去の黒いスキャンダルの歴史

文=清談社
東京ガールズコレクション、栄光と過去の黒いスキャンダルの歴史の画像1「Thinkstock」より

 10~20代の若い女性に絶大な人気を誇るファッションイベント「東京ガールズコレクション(TGC)」。今年も、3月25日に東京・国立代々木競技場第一体育館に3万人の観客を集めて盛大に開催された。

 一時期の勢いは失ったものの、TGCは24回目を数える日本最大級のファッション即売会だ。ファッションショーだけではなく、アーティストによる音楽ライブ、お笑い芸人のパフォーマンスなど、エンターテインメント性の高いステージが繰り広げられることで知られる。

 今回は小池百合子・東京都知事が開会宣言を行い、ファッション以外のアイテムや、これから公開される映画やドラマの出演者が登場するなど、さまざまなプロモーションも展開された。

 しかし、きらびやかなショーとは対照的に、TGCの裏側ではさまざまな思惑を持つ人物が多数うごめいているという。TGCの事情に詳しいアパレル関係者のA氏は、「TGCが大きくなる過程には、複雑にからみ合ったイベントの利権に多くの人間が群がり、それにブランド側が翻弄されてきた歴史があります」と語る。

 日本最大といっていいファッションイベントの背後で、いったい何が起きているのだろうか。

各種騒動のたびに名前が出るTGC

 2005年から毎年、「春夏」「秋冬」の年2回開催されるTGCは、今年で12年目を迎える。コンセプトは「日本のリアルクローズを世界へ」。リアルクローズとは、本物志向でありながら実質的価値のある「現実的な服」のことだ。つまり、日本の若い女性たちが実際に今着ているファッションを世界に発信していこう、というテーマを持つファッションイベントである。

 TGCの大きな特徴は、モデルがショーで着用した服やアイテムを、携帯電話やスマートフォンを使ってリアルタイムで買えること。ファッションショーであると同時に、大がかりな即売会という側面も持っているのだ。

 前出のA氏によると、TGCを立ち上げたのは実業家の大浜史太郎氏が経営するゼイヴェルという企業だったという。ゼイヴェルは、20代女性向けの情報サイト「girlswalker.com」などを手がけており、大浜氏を中心に第1回目のTGCが企画された。

 すでに、このときからショーで使用した服を携帯サイトで購入できる仕組みができあがっていて、ファッション業界にインパクトを与えることに成功する。第2回目には、アーティストの村上隆氏とコラボレーションするなど、大きな注目を集めるイベントとなっていった。

 雲行きが怪しくなったのは、08年にゼイヴェルの財務責任者が横領事件を起こしたあたりからだったという。A氏が事情を語る。

「ゼイヴェルは08年、社名をブランディングに変更し、化粧品のセレクトショップ『Cosme Kitchen』やアメリカの人気ブランド『kitson』の日本事業を仕掛けたのですが、横領事件をきっかけに経営不振に陥り、資金繰りのためにTGCの商標権を売却してしまいます。

 TGCの企画・運営はF1メディアという子会社が行っていたのですが、こちらも売却しました。問題は、新たにF1メディアの社長となった矢吹満という人物です」

 矢吹氏は、プロレス団体の「WRESTLE-1」や「K-1 GYM 総本部」を運営するGENスポーツエンターテインメントに携わる一方、老舗の大手PR会社・共同ピーアールの大株主になるなど、各方面に名前が登場する人物だという。

 そのため、12年8月には、矢吹氏の出自に関連して「週刊文春」(文藝春秋)に「告発スクープ! 『東京ガールズコレクション』は朝鮮総連系企業にのっとられた!」と報じられたこともある。週刊誌記者のB氏によれば、この頃から、さまざまなスキャンダルに関連してTGCの名前がたびたび取り沙汰されるようになったという。

「12年に起きた芸能プロダクション・イエローキャブ社長の帯刀(おびなた)孝則氏の自殺は、同事務所に小池栄子や佐藤江梨子といった人気タレントが所属していたこともあり、芸能界に衝撃を与えましたが、この件にもTGCの名前が登場しています。

 自殺の原因のひとつに多額の負債があったといわれているのですが、帯刀氏は資金繰りのためにTGCの映画化権を持っているプロデューサーと共同で事業を行おうとしていたようなのです」(B氏)

 さらに、14年には、男性向けファッション誌「LEON」(主婦と生活社)を創刊して“ちょいワルオヤジ”という呼称を生み出した編集者の岸田一郎氏も、TGCがらみのスキャンダルを起こしている。

 23歳のモデル志望の女性にTGCへの出演を約束し、打ち合わせの会食後、「このまま帰るとTGCには出さないよ」と肉体関係を強要したとして、やはり週刊誌の誌面を飾ったのだ。

TGC、海外展開を図るも前途多難か

 もっとも、現在は運営元も変わり、TGCから黒い噂は一掃されたように見える。前出のA氏によれば、現在のTGCは草創期からかかわっていたW TOKYO(元F1メディア)の村上範義氏を中心に運営されているという。

「村上氏は、度重なるスキャンダルがTGCのブランド力に悪影響を及ぼしていることを危惧し、彼自身が中心となって資金調達を行い、MBO(経営陣買収)によってF1メディアを買収。代表取締役社長に就任しています。

 TGCの商標権は、投資会社・ドリームインキュベータの連結子会社である日本知財ファンド1号に渡っていたのですが、DLEという企業の協力により、これも約8億円で獲得しています。DLEはショートアニメ『秘密結社 鷹の爪』や『パンパカパンツ』などを製作しているコンテンツ会社です」(A氏)

 F1メディアはW Mediaに社名を変更し、DLEと「TOKYO GIRLS COLLECTION」という子会社を設立。17年からはW MediaはTOKYO GIRLS COLLECTIONと合弁、社名をW TOKYOに変更。ようやく、TGCの商標権と運営会社が一体化した。

 ちなみに、DLE代表取締役の椎木隆太氏はソニー出身でコンテンツビジネスに長けた人物だ。娘は高校時代に起業したことで“女子高生社長”としてメディア出演も多い椎木里佳氏で、彼女もTGCにからんでいるという。

 しかし、TGCの先行きは明るいとはいえない。定番のファッションイベントとなったものの、すでに勢いは衰えており、アパレル関係者たちは「これからの拡大展開は難しい」と口をそろえる。

 今後はアジア進出など海外展開が目標とのことだが、それが成功しても失敗しても、またさまざまな人物や企業がTGCというブランドに群がってくる可能性もある。12年目を迎えた日本最大級のファッションイベントが岐路に立たされていることは、間違いなさそうだ。
(文=清談社)

清談社

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せいだんしゃ/紙媒体、WEBメディアの企画、編集、原稿執筆などを手がける編集プロダクション。特徴はオフィスに猫が4匹いること。
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