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『西郷どん』脚本と演出がおかしい!祖父と両親を失った西郷が淡々としすぎ

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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 鈴木亮平が主演を務めるNHK大河ドラマ『西郷どん』の第7回が18日に放送され、平均視聴率は前回より0.8ポイント減の14.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。

 タイトルロール明けでいきなり西郷吉之助(鈴木)の祖父・龍右衛門(大村崑)が死んだと思ったら、母の満佐(松坂慶子)も死病を患っていることが明らかになるという波乱の幕開けとなった今回。母亡き後の西郷家を案じた吉之助は嫁取りを決意し、伊集院家から須賀(橋本愛)を嫁に迎えた。ところが、間もなく父の吉兵衛(風間杜夫)が急死してしまう。

 そんな折、吉之助は病の床に伏せる母の願いを聞き、満佐をおぶって外に連れ出す。息子とともに桜島を眺めて満足した満佐は、「西郷吉之助の母親で、ほんのこて幸せじゃした」と言い残し、吉之助の背中で静かに息を引き取った――という展開だった。

 1話の中で主人公の両親と祖父が立て続けに亡くなるのは少々衝撃的ではあったが、よくよく考えると、悲劇やピンチが連続して主人公を襲う展開は大河ドラマにありがちなパターンだ。悲しい話は1話にまとめてしまおうという意図であろう。

 ただ、吉之助にとってはとてつもなく悲しい出来事が続いたはずなのに、見ているこちらにはそれがあまり伝わってこない。龍右衛門は初回からこれまで特になんの見せ場もなく、ドラマの中での存在意義がほぼなかったため、劇中での突然の死には「わざわざ大村崑をキャスティングしておいて、これで終わり?」とあっけに取られてしまった。

 なんの予兆もなく、ある朝、突然冷たくなっていたという吉兵衛の死に関しても、もう少し描き方があったのではないだろうか。あまりにも突然の悲劇に感情が追い付かないということもあるだろうが、それにしても家族の反応が薄いように思われる。

 せめて、弔いが落ち着いて家族が囲炉裏を囲むシーンでは、父の思い出を語って笑ったり涙したりする演出がほしかった。あるいは、全員がどんよりと沈んだ空気になっている演出でもよかったかもしれない。だが、実際にはそのどちらでもなく、家族みんなが淡々としていた。喜怒哀楽が激しいはずの吉之助の悲しみすら描かなかったのは、完全に脚本と演出が間違っていると言わざるを得ない。

 一方、満佐の最期については、龍右衛門や吉兵衛とは打って変わって力が入っていた。情に厚いゆえに損をする吉之助の弱点を指摘し、「こいからは吉之助さぁの好きなように生きやんせ」と諭す満佐の言葉は、吉之助の行く末を暗示しているようだったし、背中で息を引き取った母に「返事をしっくいやい」と吉之助が2度呼びかけた場面も涙を誘った。

 残念なのは、「吉之助が最愛の母を亡くした場面」として成立してしまっているがゆえに、「半年足らずの間に祖父と両親を相次いで失った悲しみ」が表現できていないことだ。情にあつい人物として西郷を描いている以上、感情の描写をおろそかにしてはドラマ自体が成立しないはずだ。今後、改善されることを期待したい。

 もうひとつ、不安な点がある。端的に言って、人物の描き方が浅いように思われることだ。特に、「二才(にせ)」と呼ばれる吉之助の幼なじみたちについては、よく登場する割に個々の人物像があまり描かれておらず、大久保正助(瑛太)に至っては、吉之助の親友であるはずなのに、まったく親しい感じがしない。吉之助の家族も、これ以上ないほどに影が薄い。こうした人々もいずれ出番が多くなるとは思うが、青年時代の背景もしっかり描いてほしいと思う。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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