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『西郷どん』感動的展開も野暮な蛇足シーンで興ざめ…丁寧すぎる演出で今後に不安

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『西郷どん』公式サイトより

 鈴木亮平が主演を務めるNHK大河ドラマ『西郷どん』の第8回が18日に放送され、平均視聴率は前回より0.1ポイント減の14.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。放送時間がオリンピック閉会式と重なっていたが、ほぼ影響を受けなかったことになる。

 嘉永6年、浦賀にペリー率いるアメリカの艦隊がやって来た。対応に追われた幕府は、西洋事情に詳しい開明派の島津斉彬(渡辺謙)を江戸に呼び寄せる。斉彬は西郷吉之助(鈴木)を江戸行きのお供に選び、家臣を通して本人に伝えた。

 一連の流れの中で、黒船の来航に慌てふためく老中・阿部正弘(藤木直人)と、紅茶らしき飲み物をたしなみながら「思ったより早かったな」とつぶやく斉彬が対照的に描かれた。

 阿部は、いかにも“できる人”オーラを漂わせているのだが、想定外の一大事にはなすすべもない様子。ペリーから「降伏する際はこれを掲げよ」と贈られた白旗を幕府重臣たちに広げて見せ、困り果てた表情を浮かべた。この感じはなかなか良い。

 史実の阿部は、頭が良くて広い視野を持つ半面、事を進める胆力に欠けている部分があったようだ。藤木は少ない出番の中で、切れ者感と神経質さをビンビン発揮しており、役柄にぴったりはまっている。

 さて、吉之助が江戸行きのお供に選ばれたことを知った祖母やきょうだいらは歓喜に沸くが、吉之助の妻・須賀(橋本愛)は「私はめでたくなか」と水を差す。須賀が言うには、江戸行きに必要な支度金は30両にもなるのだという。

 まだ山のような借金が残っている西郷家に、さらに金を貸してくれる人などいるはずがないし、いつ帰ってくるかわからない吉之助を待つのもいやだ、と冷たい表情で言い張る須賀。橋本の演技は西郷家の人々や吉之助の周囲の人々とはまったく異質で、良い意味で完全に浮いている。

 笑うのが苦手で「能面のようだ」と評されるキャラクターではあるが、ドラマにありがちな「無表情で抑揚もなく話す人物」ではないところがいい。表情は冷たく見えるが、心の中には何か意図を秘めているのだろうということが見て取れる。

 西郷家の現実を思い知った吉之助は江戸行きをあきらめようとするが、正助や家族が奔走してくれたおかげで20両がそろう。さらに、妻を離縁してやってくれと頼みに来た須賀の父親も、江戸行きの餞別として金子をくれる。かくして江戸行きの支度金がそろった吉之助は、いよいよ斉彬のお供として江戸に出立する日を迎えた――。

「子守として嫁に来たわけではないし、貧乏は嫌いだから別れてくれ」と言い立て、吉之助がそれを聞き入れると、「せいせいした」と強がって見せた須賀が切ない。吉之助はどこまでも優しく、自分が「江戸に行ってほしくない」と言ったら、江戸行きをあきらめてしまうことを知っているのだ。吉之助も嘘だとわかっていながら須賀の言い分を受け入れ、「須賀どん……」と一言だけつぶやいた。

 吉之助と須賀の離縁に関する史実を下敷きに、「情に厚いゆえに流されやすい」という吉之助の最大の長所と最大の弱点を描くエピソードに改変した第8回。1話のまとまりも良く、吉之助の家族や、正助をはじめとする幼なじみたちとの絆も描かれた。

 唯一、吉之助に別れを告げた須賀が父に真意を打ち明けるシーンだけは、蛇足であり野暮の極みだと思った。だが、一から十まで説明しないと理解できない一部の視聴者のためにわざわざ設けたのだろう。視聴する側の理解力や想像力が欠けていると、ドラマもだんだん説明過多になっていくのかと思い知らされた。

 いよいよ江戸に行き、激動の歴史の渦の中に巻き込まれていくことになる吉之助。話としては、さらに盛り上がってくるはずだが、少々ペースが遅いのが気になる。創作エピソードを重ねて話を引き延ばした前作『おんな城主直虎』とは違い、西郷隆盛の生涯は、この後も描き切れないだけエピソードがあるはずだ。前半を丁寧に描きすぎて、後半が駆け足になることがないように望みたい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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