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あいみょん超え確実の「西宮出身のスターの卵」最強清純派女優とは?

文=沖田臥竜/作家
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鳴海唯(所属事務所「MKroom」公式サイトより)

 甲子園球場がある兵庫県西宮市。長らく甲子園は大阪にあるものと思われてきた向きもあるが、今ではその誤解もだいぶ解けてきたのではないだろうか。

 そんな西宮が産んだ最近のスターといえば、シンガーソングライターのあいみょんの名が筆頭に上がるだろう。藤原紀香、鈴木亮平、芦田愛菜などなど、西宮出身の有名人は多いが、旬という意味では彼女が頂点に君臨しているはずだ。

 だが、そんなあいみょんをもいずれ上回るバリューを潜在的に持っているだろう、西宮出身のダイヤの原石がいる。少なくとも、私が原作を務める現在放送中のドラマ『ムショぼけ』関係者は全員、その原石の将来性を信じて疑わないだろう。それが女優の「鳴海唯」である。彼女の名前は絶対に覚えておくべきだ。彼女はそれほどの逸材なのである。

 ドラマ『ムショぼけ』のキャスト・オーディションは、東京と大阪で行われた。中でも主人公、陣内宗介の娘・ナツキ役と息子・カイト役のオーディションは、応募者が1000人を軽く数えた。私も書類には目を通し、気になった俳優は一次審査を通してもらった。さらに、ドラマの演出を手掛ける3人の監督を中心に他の審査員のチェックもかいくぐり、演技テストなどがある二次審査に進んだのは約300人。

 はっきり言ってしまえば、これほどの人数を、情報量の限られた書類のみで審査するとなると、運もおおいに左右するだろう。ただ、この300人は、誰かの目に止まったのだ。それだけでもすごいことだ。そして、自分が描いた物語の中の人物を、これだけの人が演じたいと思ってくれていることは、本当に有難いことだった。

 私は審査員として、大阪でのオーディションには参加したが、東京で行われたナツキとカイトの二次オーディションには参加していない。さまざま理由があるのだが、一番の理由を挙げるとすれば、この2人は想い入れが強い登場人物だったので、熱くなりすぎかねない自分の想いはさておいて、客観的にプロが選んでくれた役者のお芝居を、純粋に撮影現場で見たいと思ったからだった。

 そんな激戦のオーディションにあって、特に熾烈な争いだったのがナツキ役だった。すでに映画やドラマで実績ある女優も多数応募していたのだ。だが、結果だけ見ると「激戦」とはいい難いものではあったのも事実だ。オーディションが終了し、プロデューサーの角田道明氏から私の携帯に一報が入ったのだが、彼は電話口で興奮した声でこう告げたのだ。

 「3人の監督の意見が合い、満場一致で鳴海唯さんに決定しました!」

 私が鳴海さんの存在を初めて知った瞬間だった。人によって芝居の好みはさまざまのはずだが、3人の監督がすべて彼女を選んだというのである。よほど個性が強く、演技はうまい女優さんなのかと思いながら、あらためて角田氏に鳴海さんのプロフィールを送ってもらった。ドラマの舞台は私の地元である尼崎だが、彼女がその隣の西宮市出身であることもこの時に知ったのだった。

そりゃ、売れるよ……

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『ムショぼけ』撮影現場にて。左がナツキを演じた鳴海唯、右がカイトを演じた山崎竜太郎

 そして、ドラマはクランクイン。鳴海さんの出番もほどなくしてやってきた。ロケ場所は阪神尼崎駅。14年ぶりに父である陣内宗介と再会を果たす、物語の中でも大切な、私が原作の中でもこだわったシーンのひとつである。その時、彼女のお芝居を観ながら、私はこう感じたのだった。

 「もし自分が審査員として東京オーディションに参加していても、結果は同じだっただろう」

 それほど彼女のお芝居は圧巻だったのだ。

 撮影終了後、私は鳴海さんを自分が運転する車の後部座席に乗せて、新幹線の駅まで送った。その道中、彼女は後部座席に座り、まったく物怖じせずに、どうして大学を辞めてまで女優を目指したのか。なぜナツキのオーディションに応募したのかなどを熱心に語ってくれた。

 その時、彼女は私のことをドラマの原作者とは理解していない。なぜならば、私は挨拶をしていないし、自分の名前も名乗ってなかったからだ。そんな中で送迎車を運転しているのである。普通は私のことを送迎係と思うだろう。

 ちなみに、基本的に私はどの現場でも、自分からは挨拶しない。役者さんに対してもだ。例外だったのは、映画『ヤクザと家族 The Family』でご一緒した舘ひろしさんと、『ムショぼけ』の武田玲奈さんだけである。

 武田さんは、クランクイン日に撮影現場で弁当を食べようとすると、たまたま隣に席に彼女が座ったのだ。周囲を見渡すと、お弁当を手に取ろうとする武田さんしかいない。これはどう考えても、私から挨拶せねば気まずいと思い、挨拶をさせてもらった。もうひとり、舘ひろしさんは、『ヤクザと家族』の現場で、その圧倒的な存在感を目の当たりにすると、身体が勝手に挨拶していたのであった。

 挨拶をなぜ自分からしないのか。しないというよりも、できないのだ。情けない話だが、単純にひどい人見知りで、初めての人と話すが苦手なのである。何も格好をつけているわけではない。

 話を元に戻すと、鳴海さんは、送迎係の私に、すごく気を使っていろいろな話をしてくれていた。特に印象的だったのが、「『ヤクザと家族』がすごく大好きなんです!!!」といった言葉だった。

  『ムショぼけ』の製作チームは、本作の企画プロデュースを務める藤井道人監督の映画『ヤクザと家族』のそれから派生してできたチームだった。ゆえに『ムショぼけ』関係者は、その言葉を言われると当然、弱いのである。当たり前ではないか。『映画ヤクザと家族』がなければ、ドラマ『ムショぼけ』は誕生していない。ある意味、『ヤクザと家族』なくして、小説しかりドラマしかり、『ムショぼけ』という作品は語れないのである。

 鳴海さんのすごいところは、その後、私がドラマの原作者であり、監修を務めているとわかっても、一切態度が変わらなかったところだ。それくらい日頃から、スタッフの人たちに接する態度がすこぶるよい。そして、すこぶるお芝居がうまいのである。

 鳴海さんと『ムショぼけ』で共演した大御所バイプレーヤーの木下ほうかさんのラジオ番組にわたしが呼ばれたことがあったのだが、ほうかさんも彼女について、「よく見つけてきたな~」と絶賛していたほどだった。

 彼女の印象は、撮影が終わる最後の最後まで変わらなかった。普通、役者の人たちは自分の出番が終わると、オールアップとなり、東京へと帰っていき現場には戻ってこないものだが、彼女だけは、ドラマのクランクアップに立ち会うためだけに、わざわざ東京から尼崎にやってきたのだった。

 私は思った。そりゃ、売れるよ……と。

 いよいよドラマ『ムショぼけ』は12月12日に最終回を迎える。最後まで、彼女、鳴海唯さんのお芝居にぜひ注目してみてほしい。きっと『ムショぼけ』の監督3人と同じ意見になるはずである。ナツキを演じるのは彼女しかいない!と。

文=沖田臥竜/作家

沖田臥竜/作家

沖田臥竜/作家

作家。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)はドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

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