2011年3月11日の東京電力福島第1原発事故以来、国内での原発建設は完全にストップした。30年代に原発の稼動ゼロを目指す政府の方針の下では、原発の新設は見込めない。日立は原発事業からの撤退さえ取り沙汰されていた。その矢先に海外での原発事業の拡大である。自公政権が復活して、原発が再稼働することを見越した決定なのか。
きっかけはドイツ政府が11年、脱原発政策にカジを切ったことだろう。ドイツ政府の方針を受け、ホライズンの親会社であるドイツの電力会社RWEと同業オーエンの2社が12年3月、全株式売却の方針を表明した。
当初、ホライズンの買収は中国企業が有力視されていた。バックにつく中国政府の資金支援が期待できるからだ。しかし、実質的な原発の発注者である英国政府が安全保障にかかわる問題として、中国企業(=中国政府)の手に落ちることに対して警戒感を強めた。このため中国企業は撤退した。
そこで代わって浮上してきたのが日本勢だ。現在、世界の主な原発メーカーは6社。日立、東芝、三菱重工業と日本企業が半数を占める。日立は米ゼネラル・エレクトリック(GE)と事業を統合し、東芝は米ウェスチングハウスを傘下に収めた。
入札に最後まで残ったのは、日立と東芝の日本企業2社だった。結果として条件交渉で高い値段を出した日立がホライズンを買収することが決まった。独2社の株式売却の表明からわずか7カ月という短期間での交渉だったため、日立はパートナー企業を募ることができず単独での入札となった。
「エネルギー分野の新たな事業者として歓迎する」。日立のホライズン買収に英国のキャメロン首相は直ちにコメントを出した。
10月30日、会見した日立の羽生正治執行役常務は「日立が原子力発電事業をやるわけではない。プラントメーカーとして発電所をつくる『場』が欲しいだけ」と説明した。当初は出資比率が100%だが、5年ほどかかると想定している建設許認可取得後の原発建設時にパートナーを募る予定。最終的に出資比率を5割未満まで引き下げる方針を示した。発電を担う電力会社を出資のパートナーと想定している。