●変わりゆく世界のエネルギー政策
話は戻るが、ホライズンはRWEとオーエンが出資。英国で原発事業を展開するために09年に設立された。英国では現在16基の原発が稼動し、全発電電力量の約2割をまかなっているが、設備の老朽化が進んだことで新規の原発建設に向けた動きが高まっていた。これをビジネスチャンスと捉え、ドイツの2社が英国に進出した。
ホライズンは英国の2カ所で130万キロワット級の改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を計4-6基建設する計画を進めていた。日立が今後、ホライズンの事業計画を引き継ぐ。最初の1基は、20年代前半の運転開始を目指す。日立は原発建設と稼動後の保守・管理を請け負う。
プロジェクトの総事業費は200億ポンド(約2兆6000億円)に達するとみられている。資金調達の具体的な方法については、財務アドバイザーの、みずほフィナンシャルグループと米投資銀行エバコア・パートナーズと協議中。日本の政府系金融機関からの資金調達を検討する。羽生常務は「投資回収には18年程度かかる見通しで、出資と融資の割合は3対7を考えている」とした。
巨大な事業となるだけにリスクは大きい。ホライズンの親会社であるドイツの電力会社2社が撤退を決めたのは、ドイツ政府が脱原発政策に転じたのが一因だが、「(英国政府の)財政難で短期的なリターンが得られないと判断したから」(電力担当の国内証券会社のアナリスト)だという。
日立はプラントメーカーであり、発電を担う電力会社の参加なくしてプロジェクトは成り立たない。だが、パートナーとなってくれる電力会社を見つけるのは容易ではない。
「安価な火力発電燃料が大量に採掘できるシェールガス革命が進行中のため、米国の電力会社はリスクの高い原発ビジネスに及び腰。フランスのオランド政権は7割以上ある原発依存度を5割に引き下げる公約を掲げた。ドイツは脱原発だ。欧米の電力会社は、よほどの利益が見込めない限り、おいそれとは手を上げないだろう」(前出のアナリスト)。東京電力が健在なら英国進出も考えられたが、総合商社にその度胸はない。