白斑問題のカネボウ、経営陣の処分・防止策へ専門家、消費者から厳しい批判〜遠い正常化
カネボウ化粧品の美白化粧品で肌がまだらに白くなる「白斑」被害が相次いでいる問題で、同社から調査の委託を受けた弁護士らは、9月11日、第三者調査報告書を発表した。
9月12日付朝日新聞朝刊によると、同社は2011年に顧客から症状について最初の申し出があってから、顧客や医師から複数の問い合わせを受けていたが、自主回収を決めた今年7月まで具体的な対応を取らないでいた。結果、被害者は1万人に迫り、報告書では同社の「事なかれ主義」が被害を拡大させたと、厳しく批判している。また、夏坂真澄社長も11日に会見を開き、謝罪。社長、会長らの役員報酬を9月から6カ月、10~50%減額する処分も発表したが、社長自身の引責辞任については否定した。
この処分を多くのネットユーザーは「甘過ぎる」と感じているようだ。Twitterでは「すごいよな、被害者が1万人に達するのに社長は減俸処分だけ。それを諌められない経営陣だからこそ、ここまで被害が拡大したのだろう」「そんなことより被害者に十分な補償を。残念ながら三流の経営姿勢だ」など、厳しい声が投稿されている。
カネボウは今回の調査結果を受けて、部署間の連携や情報共有を強化する、新たな防止策を発表した。しかし、その内容は「顧客の声を直接に聞く」「医師からの指摘は全件に対応し、患者に会う」「社員の声は先行情報として対応する」という抽象的なものだった。
この対策について、危機管理コンサルタント会社、リスク・ヘッジの田中辰巳代表は「いずれも当たり前で、やっていない方がおかしい内容」と朝日新聞でコメント。さらに「一つの情報を『氷山の一角』ととらえ、多様な角度から情報を取り出しにいく態勢が必要だ」と、情報を判断する責任者の明確化や関連部門の人員増など、具体策の必要性を指摘している。
●正常化へは課題山積
同様に組織改革の必要性を説いているのが、9月12日付東洋経済オンライン記事だ。カネボウでは社員の専門性を高めるため、入社時に配属された部署からほとんど異動がない人事制度を採用している。施策の判断や実行において、各部門の独立性が高まるという利点があるものの、今回の問題ではそれが裏目に出た。部門間での情報共有や業務連携が進まない“たこつぼ化”が進行し、今回の問題の「根本」となったというのだ。
カネボウは次の会計年度が始まる来年1月から、部門間の異動を積極化し、“たこつぼ化”した組織体制を抜本的に解消していくという。しかし、同記事は「長年しみ付いた“風土”をそう簡単に変えられるものではない」と指摘。「今回の問題を招いてしまった“風土”を認識し、経営陣以下の全従業員がそれを変えていくという覚悟を持って臨まない限り、根本的な解決には至らない」と警鐘を鳴らしている。
9月12日付日本経済新聞によると、店頭でのカネボウ製品の売上高は2割減の状態が続いているという。また、親会社である花王は7月末、慰謝料の支払いなどでかかるカネボウ関連の特別損失として、13年12月期に56億円計上する見込みと発表していたが、発症者が1万人規模となり、今後さらに膨らむ公算が高い。
今後、販売の回復に向けて、カネボウは自主回収の対象となった主力の美白化粧品「ブランシールスペリア」を年内をめどに再販売する。また、自主回収の発表後、約2カ月間自粛していたテレビCMも、メーキャップブランド「ケイト」とヘアブランド「サラ」で8日から再開した。
正常化に向けて動き始めたカネボウだが、課題は山積みだ。夏坂社長は11日の会見で、「安全管理の態勢を抜本的に見直し、信頼されるカネボウ化粧品を作り直す第一歩にしたい」と決意を述べているが、実現までにはまだしばらく時間を必要としそうだ。
(文=blueprint)