新体制では「親会社NAVERの意向が反映されている。グループの総帥イ・ヘジン氏は引き続き非常勤取締役会長を務め、イ氏のホットラインであるシン・ジュンホ氏、パク・イビン氏が要職についた」。シン氏(取締役)は買収合戦で激化する海外展開の旗振り役で、パク氏(上級執行役員)はプラットフォーム開発の責任者だ。
NAVERは韓国法人だが、LINEは完全子会社とはいえ、決裁権限は日本に一任し、そのような海外子会社の放任主義が素早い意思決定と急成長に寄与しているとみられてきた。しかし、「LINEの成功以降、社内でシン氏の姿をよく見掛けるようになった。月に半分くらいいるときもあった」「(社長の)森川氏も、NAVERからは部長レベルの扱いのように見えた」と元社員は証言し、実態は韓国本社に依存していると指摘する。
「LINEは13年10~12月期に売上高122億円(前四半期比2割増)を計上している。そのうちゲーム課金が6割と主力だ。スタンプ課金が2割で、残りの2割のほとんどを広告収入が占めている」のだが、ゲーム課金と広告収入においては、LINEと周辺企業との間には軋轢が生まれているという。
●周辺企業と軋轢を生み始めている
「これまで、スクウェア・エニックスやコナミなど、サードパーティと呼ばれる外部の名だたる大手ソフトメーカーがLINE向けにゲームを提供したが、目立った売り上げを出せていない」ことで、他社のコンテンツを受け入れてLINEという場を活性化しようという目算に狂いが生じているようだ。
他社がLINEにゲームを提供しても、『LINE POP』や『LINEバブル』といったLINEのスタンプキャラクターを使ったオリジナル作品が強すぎる上に、売り上げの大部分をLINEに持っていかれるのだという。
「特に売り上げ配分については『ほとんど手元に残らない』と複数の提供会社幹部は証言する。LINE自体がグーグル、アップルのプラットフォームで提供されているアプリのため、LINE自体がまず3割の手数料を引かれる。『さらにそこからLINEは5割手数料を引いている』(証券アナリスト)という推定もある。会社は売上配分率を公開していないが、事実ならば、売り上げの35%しか開発会社に残らない」との指摘もあるように、LINEのプラットフォームを活用して売り上げを増やした事例は今のところほとんど存在しない。
不満の声は広告事業でも出ている。LINEの広告事業で主力のスポンサードスタンプという広告商品を1年以上活用している、化粧品通販企業のマーケティング担当者は「いくらなんでも高すぎる」とつぶやく。
「スポンサードスタンプはキャラクターを使ったスタンプを4週間掲載できるもの。大手では、サントリーやソフトバンクなどが活用している。公式アカウントと呼ばれる企業アカウントと連動した場合、料金はスタンプ8種類が2000万円、16種類が2500万円。12年7月の開始以来、2回にわたり500万円ずつ値上げを行い、大手全国紙の全面広告に引けを取らない価格水準だ」
「公式アカウントの数も頭打ちのようで、LINEの広告事業は限界が見え始めている」と論評するネット広告企業幹部もいるという。
こうして両誌を見てみると、結局、LINEのゲーム事業、広告事業はどうなっているのかわからない。経済メディアで企業の評価がここまで二分されるのも珍しい。それも、ともに役員などキーパーソンにインタビューを敢行しているにもかかわらず、このように相反する内容となっている。
ジャーナリズムの姿勢としては、鋭く切り込もうとする「週刊東洋経済」の姿勢を評価したいが、LINEと韓国との関係を強調している記事づくりには、出版不況下で唯一といってもいいドル箱テーマ「嫌韓」の風潮に乗ろうとしているのではないかという疑念もわいてくる。
(文=松井克明/CFP)