
近年、世界中で大人気となっている自動車のカテゴリが「SUV」(スポーツ用多目的車)だ。今や、ランボルギーニやロールス・ロイスですらSUVをラインナップするほどである。
オシャレかつ使い勝手が良いイメージがあるSUVは国内の販売台数で軽自動車やコンパクトカーに肉薄する勢いを見せており、中でもトヨタ自動車「C-HR」が人気を集めている。アウトドアブームも追い風となり、今後ますます自動車市場を席巻していくことだろう。
しかし、国産SUVにはさまざまな問題点が指摘されており、世間の評価と性能には大きな乖離があるという。そこで、自動車に詳しいライターの呉尾律波氏に「国産SUVワースト3」を挙げてもらった。
SUV人気の火付け役は「3代目ハリアー」
SUVは「スポーツ・ユーティリティ・ビークル」の略称で、簡単に言えば「普段使いからレジャーまで多目的に使えるスポーツ車」のことだ。コンパクトSUVから大型SUVまでさまざまなタイプがあるが、いずれも車高が高くてタイヤが大きく、街乗りをメインとしながらオフロードも走れるという触れ込みとなっている。
呉尾氏によると、日本でSUV人気の火付け役となったのは、2013年に登場したトヨタ「ハリアー(3代目)」だという。
「SUVは、セダンでもミニバンでもなく『四駆』と呼ばれるクロスカントリーでもない、新たな選択肢として注目されているカテゴリです。最近は都会に住む若い世代の中でも、キャンプやアウトドアに憧れを抱く層から支持を集めています。そうした人たちの間で、特にハリアーは人気になりました」(呉尾氏)
今の20~40代にとってセダンは一昔前の古臭いクルマで、SUVこそが「最先端のかっこいいクルマ」となっているようだ。
しかし、一口にSUVと言っても、さまざまなモデルがある。そして、日本の自動車メーカーのSUVと海外メーカーが生産した輸入SUVとでは、車体の設計からしてまったくの別モノだという。
「海外メーカーのSUVは最初から『SUVとして設計されたクルマ』で、その性能も多目的車に特化しているものが多い。一方、国産SUVは『コンパクトカーをベースに形だけSUVにしたクルマ』で性能は物足りず、デザインも走りもどっちつかずのモデルばかり。もともとコンパクトカーがベースなので、オフロードなんて走れるわけがありません。まさに中途半端の塊なんです」(同)
快適性も同様だ。SUVはミニバンのように家族で快適に移動でき、ワゴンのように荷物を積めるのも売りだが、国産SUVは後席の乗り心地も良くないという。
「国産SUVは基本的にサスペンションが固いため、後部座席の乗り心地が悪く、車高が高いので乗り降りするのも大変。子どもやお年寄りに優しくないんです。しかも、後部座席の窓が非常に狭い。こうした設計を見ると、子どもがドライブ中に外の景色を楽しむことをまったく考えていないとしか思えません」(同)
さらに、維持費の面でもSUVにはデメリットが多い。そもそもSUVはコンパクトカーに比べて車体重量が重いので燃費が悪い。加えて、ホイールが大きいのでタイヤも大型化し、タイヤ交換時にはその分の出費がかさむ。ユーザーの中には、スタッドレスや車検などの節目でタイヤのインチを下げる人もいるほどだという。
ただでさえ、SUVは乗り出し価格が200万~300万円と割高の設定になっており、さらにタイヤ交換の出費が重なると、維持するだけで一苦労しそうだ。