三菱「エクリプス クロス」とBMW「X2」が車のプロたちから人気を誇る理由
今回は、2019年次RJCカーオブザイヤーをご紹介したい。RJCは「日本自動車研究者・ジャーナリスト会議」と呼ばれる、1991年に設立された特定非営利活動法人。ジャーナリストが多いが、大学教授、交通評論家、自動車研究家など幅広いバックグラウンドを持った人たちの集まりで、2018年度の会員は59名だ。私も02年以来、会員となってきた。
RJCによる、カーオブザイヤー、カーオブザイヤー・インポート、テクノロジーオブザイヤーの選考は、まず会員の投票により上位6車、6技術を選出、続いて、ツインリンクもてぎのサーキットに各カテゴリーのベスト6を集めて最終選考会を開き、サーキット内にある一般路、評価路で試乗評価後、無記名で投票する。今回は特別賞も設定された。
同一条件で相対比較すること、投票が無記名であることの意義は大きく、投票総数が50前後になることの統計上の意義も大きい。カーオブザイヤーはRJC以外にも、日本カー・オブ・ザ・イヤーや日本自動車殿堂カーオブザイヤーなどがあるが、電動化、自動化、IoT(モノのインターネット)、シェアリングなどが進むなかで、クルマに対する評価や評価の手法も大きく変わっていくことは間違いなく、カーオブザイヤーの今後のあり方を模索していくことが必須だと思う。
授賞式は、昨年12月17日に行われた。以下、それぞれの受賞車をご紹介しよう。
2019 RJCカーオブザイヤー受賞車:三菱自動車「エクリプス クロス」
受賞理由
「スタイリッシュなクーペスタイルのコンパクトSUVというだけではなく、三菱自動車独自の電子制御4輪駆動技術『S-AWC』により、高い走破性、操縦安定性を確保。新開発1.5L直噴ターボエンジン+8速スポーツモード付CVTは、中低速トルクを向上させることで活発な走行性能を実現した」
SUV(スポーツ用多目的車)としての基本性能の高さ、優れた走行性能に加えて、スタイリッシュなデザインと日常生活における使いやすさを組み合わせた、魅力的な三菱のグローバル戦略車だ。全グレードに新開発の1.5Lダウンサイジング直噴ガソリンターボエンジンを搭載、8速スポーツモード付CVTと組み合わされる。4WD車にはS-AWC(スーパーオールホイールコントロール)が搭載されるが、S-AWCとは、駆動性能および車両の旋回性能と安定性能を広範囲な走行条件で向上させる車両運動統合制御システムだ。
2019 RJCカーオブザイヤー・インポート受賞車:BMW「X2」
受賞理由
「SUVとクーペを融合させたBMW独自のSAC(スポーツ・アクティビティ・クーペ)としてアグレッシブなプロポーションを持つ。1.5L直列3気筒ターボ+7速DCTのFFモデルと、2.0L直列4気筒ターボ+8速スポーツATの4WDモデルを用意。ダイレクトなステアリングとパワフルな走りに加え、小回りのきく優れた日常性能も併せ持つ」
BMWは近年、SAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)と呼ぶカテゴリーのモデルを積極的に導入、X2はX1のプラットフォームを活用したコンパクトなクロスオーバーSUVで、クーペ風の外観スタイルでありながら実用性も不満のないレベルだ。2Lはもちろん、3気筒の1.5Lでも十分にスポーティーな走行が可能で、加えて直進時、ワインディングロード走行時ともに非常に楽しめる操縦安定性を備えており、大変魅力的なクルマに仕上がっている。
2019 RJCテクノロジーオブザイヤー受賞車:日産自動車「セレナe-POWER」
受賞理由
「エンジン、バッテリーといった主要パーツを既製の自社製品を使って構成、基本原理は単純なシリーズハイブリッドながら、低燃費の電動車両を低コストでまとめ上げた。減速回生ブレーキを有効に活用することにより、運転を楽しくかつ負担軽減する『ワンペダル操作』をも実現するシステムである」
e-POWERを一言でいえば、エンジンで発電してモーターだけで走る「発電機式電気自動車」で、充電の心配なくモーターのみで継続して走行できる。セレナe-POWERはバッテリーをフロントシート下とセンターコンソール下に分けて搭載、320Nmのモーターと1.2Lの3気筒エンジン(62Kw)がエンジンルームに収まっている。静止状態からフルトルクの期待できるモーターならではの走りと静かさは圧巻で、走行中の車内でのコミュニケーションも容易だ。アクセルペダルを戻すことで減速が可能なワンペダルドライブにより、ドライバーがブレーキを踏む機会が70%も減るという。雪が積もった路面や氷結した路面でのメリットも大きいはずだ。
2019 RJC特別賞受賞車:本田技研工業「N-VAN」
受賞理由
「軽バンの新基準となることを目指して開発。荷室を低床化、また助手席からリヤシート、テールゲートまでフラットな空間を実現。さらに軽バン初のセンターピラーレス仕様とするとともに、テールゲートと使い分けることで、高さのある荷物の積載をもさらに効率良くスムーズに行うことを可能とした。『積む・運ぶ』を快適にするとともに、日常生活を豊かにした」
(文=小早川隆治/モータージャーナリスト)
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