EVで物流革命勃発
ヤマトホールディングス(HD)傘下のヤマト運輸が首都圏の宅配に小型のEV(電気自動車)を導入する。人手不足や燃料高を解決するばかりか、物流業界にさまざまな恩恵をもたらすと考えられる。果たしてEVの導入は物流革命を起こすだろうか。
ヤマトが導入するEVトラックは、独ストリートスクーター製だ。ヤマトの使い方に合わせた独自設計である。今秋にも本格導入し、約4万台ある集配車を徐々にEVに転換する。ストリート社は国際的な物流大手のDHLが、2014年に将来の物流のEV化を見据えて買収したスタートアップだ。
EVトラックは運転が容易で、疲労が少なく、人手不足の解消策になるばかりか、維持費の安さが魅力だ。たとえば三菱ふそうトラック・バスのEVトラックであるeCanterは、1万キロメートル走行で1000ユーロ(12万3000円)の経費削減が可能だという。
必要な自動車は自分たちでつくる
事業にEVを導入する動きは日本でも起きつつある。佐川急便は日産からすでに16台のEVを導入している。また、日本郵便は19年から20年度にかけて1200台の導入を予定している。車種は三菱自動車のバン型のEV軽トラック、MINICAB MiEVである。日本郵便はかつてスバルサンバーの改造EVの導入を計画したが実施されなかった。いよいよ本格的な導入である。
一方、DHLは既存の自動車メーカーに専用EVの生産を依頼するも、願いはかなわなかったという (日本経済新聞報道より) 。それなら自分たちの使い方に合った独自の商用車を自分たちでつくろうと、ストリート社を買収したということだが、これはEVだから可能なのである。この「自分たちが使う自動車は自分たちでつくる」ことを可能にするのが、EVの産業構造破壊力である。自動車は自動車メーカーがつくるという産業構造が、EVの登場で崩壊するということである。
EVは新型車の開発費を激減させる
最初のEVの開発には時間がかかるが、バリエーション展開はきわめて容易である。
たとえば独フォルクスワーゲン(VW)はe-Golf、e-UP!の既存のエンジン車の改造EVを送り出し、十分なデータを取得すると、EV用の専用プラットフォームであるMEBコンセプトを発表した。これはエンジン車用のMQBのEV版であり、MQBが小型のポロ(Aセグメント)からパサート(Dセグメント)までカバーしたことを考えると、MEBもまた多くのモデルの共通プラットフォームになると考えられる。