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舘内端「クルマの危機と未来」

物流業界、エンジン車からEVへ移行本格化…絶大なコスト削減&人手不足解消の効果

文=舘内端/自動車評論家
物流業界、エンジン車からEVへ移行本格化…絶大なコスト削減&人手不足解消の効果の画像1
クロネコヤマトの宅急便の配送車(「Wikipedia」より/天然ガス)

 

EVで物流革命勃発

 ヤマトホールディングス(HD)傘下のヤマト運輸が首都圏の宅配に小型のEV(電気自動車)を導入する。人手不足や燃料高を解決するばかりか、物流業界にさまざまな恩恵をもたらすと考えられる。果たしてEVの導入は物流革命を起こすだろうか。

 ヤマトが導入するEVトラックは、独ストリートスクーター製だ。ヤマトの使い方に合わせた独自設計である。今秋にも本格導入し、約4万台ある集配車を徐々にEVに転換する。ストリート社は国際的な物流大手のDHLが、2014年に将来の物流のEV化を見据えて買収したスタートアップだ。

 EVトラックは運転が容易で、疲労が少なく、人手不足の解消策になるばかりか、維持費の安さが魅力だ。たとえば三菱ふそうトラック・バスのEVトラックであるeCanterは、1万キロメートル走行で1000ユーロ(12万3000円)の経費削減が可能だという。

必要な自動車は自分たちでつくる

 事業にEVを導入する動きは日本でも起きつつある。佐川急便は日産からすでに16台のEVを導入している。また、日本郵便は19年から20年度にかけて1200台の導入を予定している。車種は三菱自動車のバン型のEV軽トラック、MINICAB MiEVである。日本郵便はかつてスバルサンバーの改造EVの導入を計画したが実施されなかった。いよいよ本格的な導入である。

 一方、DHLは既存の自動車メーカーに専用EVの生産を依頼するも、願いはかなわなかったという (日本経済新聞報道より) 。それなら自分たちの使い方に合った独自の商用車を自分たちでつくろうと、ストリート社を買収したということだが、これはEVだから可能なのである。この「自分たちが使う自動車は自分たちでつくる」ことを可能にするのが、EVの産業構造破壊力である。自動車は自動車メーカーがつくるという産業構造が、EVの登場で崩壊するということである。

EVは新型車の開発費を激減させる

 最初のEVの開発には時間がかかるが、バリエーション展開はきわめて容易である。

 たとえば独フォルクスワーゲン(VW)はe-Golf、e-UP!の既存のエンジン車の改造EVを送り出し、十分なデータを取得すると、EV用の専用プラットフォームであるMEBコンセプトを発表した。これはエンジン車用のMQBのEV版であり、MQBが小型のポロ(Aセグメント)からパサート(Dセグメント)までカバーしたことを考えると、MEBもまた多くのモデルの共通プラットフォームになると考えられる。

舘内端/自動車評論家

舘内端/自動車評論家

1947年、群馬県に生まれ、日本大学理工学部卒業。東大宇宙航空研究所勤務の後、レーシングカーの設計に携わる。
現在は、テクノロジーと文化の両面から車を論じることができる自動車評論家として活躍。「ビジネスジャーナル(web)」等、連載多数。
94年に市民団体の日本EVクラブを設立。エコカーの普及を図る。その活動に対して、98年に環境大臣から表彰を受ける。
2009年にミラEV(日本EVクラブ製作)で東京〜大阪555.6kmを途中無充電で走行。電気自動車1充電航続距離世界最長記録を達成した(ギネス世界記録認定)。
10年5月、ミラEVにて1充電航続距離1003.184kmを走行(テストコース)、世界記録を更新した(ギネス世界記録認定)。
EVに25年関わった経験を持つ唯一人の自動車評論家。著書は、「トヨタの危機」宝島社、「すべての自動車人へ」双葉社、「800馬力のエコロジー」ソニー・マガジンズ など。
23年度から山形の「電動モビリティシステム専門職大学」(新設予定)の准教授として就任予定。
日本EVクラブ

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