最近、経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)の今後の展開について、一段と不透明感が強まっているようだ。もっとも重要なポイントは、これから同社がいかにして成長を目指すか明確な方針が見えてこないことだろう。
JDIの業績悪化は市場参加者の想定を超えている。同社経営陣のなかでも、ここから先どの程度業績が悪化するか読めないという部分があるかもしれない。2019年3月期決算は1094億円の最終赤字に陥った。世界経済が相応の安定を維持し、中国のスマートフォンメーカーなどが成長を遂げるなかで、JDIが5年連続で赤字に陥ったことは軽視できない。同社は価格競争の激化という環境の変化に適応できず、操業を続ければ続けるほど経営が悪化する状況に直面している。
JDIは筆頭株主であるINCJ(旧産業革新機構)の支援を得て台中3社連合との資本業務提携に望みをつなげた(台湾TPKはすでに離脱を表明)。それは、目先の資金繰り確保には重要だ。ただ、米中の通商摩擦が長期化する可能性が高まるなど事業環境が悪化するなか、JDIがビジネスモデルを再構築することは容易ではないだろう。
JDI経営悪化の原因
JDIの業績がここまで悪化した原因に関して、さまざまな指摘がある。根本的な原因は、日本の産業政策の失敗だろう。この問題は1980年代の日米半導体摩擦にまでさかのぼって考える必要がある。ポイントは、日本が米国からの圧力を回避するために台湾や韓国の企業に技術を供与し、結果的に海外企業の急成長を許してしまったことだ。
1980年代半ば、日本の半導体産業は世界の50%程度のシェアを誇っていた。1985年、米国では半導体メーカーがこの状況を問題視し批判し始めた。その主な主張は、「日本の市場は閉鎖的であり競争原理が働いていない」「日本のメーカーはその環境を生かして、設備投資を進め半導体のダンピング(不当廉売)を行っている」「米国の企業は競争上不利な状況に置かれている」、といったものだった。
1986年、米国の圧力に屈し、日米半導体協定が締結された。締結によって、日本は国内市場における外国製の半導体シェアを高めることなどを受け入れた。この時、国内の電機メーカーは韓国の半導体産業に技術を供与することによって、間接的に自社のシェアを維持しようとした。この結果、韓国のサムスン電子などが日本の技術を吸収し、政府からの優遇も取り付けて急成長を遂げた。