難航が予想される経営再建
このように考えると、国策企業であるJDIは、各企業の利害や政府の後ろ盾という甘えの意識に浸り、競争力を自ら高めることができなくなっているといわざるを得ない。組織の実力とは、人員数×集中力によって決まる。つまり、一人ひとりが自社の目標を理解し、やるべきことがわかっていることが大切だ。経営者は大きな方針を経営戦略として示し、各人が向かうべき方向を示してあげればよい。
現状、JDIの経営陣からは、この根本的な方針が見えてこない。経営陣の目線は、目先の資金繰り確保に向かってしまっている。同時に、アップルのiPhoneの販売不振からJDIの白山工場(石川県)は生産を3カ月間休止する可能性がある。アップルが債務返済を待ってくれるからといって安心できる状況ではない。むしろ、工場の休止によるフリー・キャッシュフローの落ち込みを補うために、固定費などの削減が必要だ。
当面、JDIは費用の削減を進めることによって経営を続けることになるだろう。ただ、いつまでも資産の売却などを続けることはできない。売却などを続けていくと、最終的に企業そのものがなくなってしまう。
もし台中の企業連合が出資を決定したとしても、狙いは技術の取得にある。現時点で、海外企業との提携がJDIの経営再建と収益力の向上につながるとはいいづらい。米中の貿易戦争が一段と激化してiPhoneをはじめ世界全体でのスマートフォン販売が一段と減速し、海外企業がJDIへの出資を早期に引き上げることも考えられる。
JDIの先行きは前途多難だ。日本企業は同社の教訓を生かさなければならない。生かすべき教訓とは、経営者が組織全体の向かうべき方向を明確に示し、それに向かって従業員一人ひとりが自らの能力を発揮しやすくすることだ。そのためには、新しい発想や多様な人材を積極的に取り入れ、組織全体でチャレンジしていくことが欠かせない。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)