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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

かんぽ生命、契約者がチェックすべき「詐欺的手口リスト」総まとめ…高齢者をターゲット

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー

・契約乗換によって保険料負担が増加した事例

 一般の生命保険には、既契約を下取りするかたちで新しい保険に加入する「契約転換制度」があるが、かんぽ生命にはこの仕組みがない。保障内容の変更には、既契約を解約し、新しく契約に加入する「契約乗換」で対応している。ニーズに応じた見直しには有効だが、年齢によって保険料が高くなったり、旧契約よりも予定利率が低くなったりして、負担が増加するデメリットがある。通常は、その保障が本当に必要か、増えた保険料をずっと支払い続けられるのかなどを考慮し、慎重にならざるを得ない見直しのはずだが、これが横行していた。

・病気が見つかり契約解除。保険金が受け取れなかった事例

 新契約締結後、既往症等の告知義務違反として契約が解除された。あるいは病気発症が新契約締結前であることを理由に保険金が受け取れなかった(2014年4月~2019年3月で想定件数3100件)。

・特約の切替で対応できるものを不利な契約乗換をさせられた事例

 かんぽ生命には、基本契約に付加できる入院・手術、先進医療、死亡・傷害といった特約があるが、契約後のニーズ変化に応じて中途付加あるいは特約の切替(加入中の特約を新しい特約に切り替えること)ができる。具体的には、かんぽが株式上場直前の2015年10月から2017年9月までに、かんぽ生命の保険に加入した場合、旧入院特約(「その日から」)から新医療特約(「その日からプラス」<無配当総合医療特約>2017年10月発売)への切替が可能で、本来は契約乗換の必要がなかった可能性がある(2017年10月以降で想定件数5000件)。

 このような事例以外にも、郵便局員が販売実績をあげるために、契約者に対して保険の対象となる人(被保険者)を短期間に変える「ヒホガエ」と呼ばれる手法を行っていたという。

 具体的な契約方法はこうだ。契約者(保険料負担者)を高齢の母、被保険者を長男として養老保険に加入。続いて、被保険者を次男とした養老保険も勧めるが、保険料が負担できないと言って断られると、先に契約した長男の分を解約させ、次男を被保険者とした新しい契約を締結するわけである。

 契約者である母の手元に戻ってくるのは、変更時の途中解約によるわずかな返戻金のみ。複数契約を締結できず、お金に余裕のない高齢者にこの方法を促していたというから、保険を悪用した詐欺まがいの手口にあきれるばかりである。

 では、実際、かんぽ生命ではどのような商品が販売されていたのか、後編では、かんぽ生命が取り扱っている主な商品や特徴、不適切な契約を見極めるポイントをご紹介しよう。
(文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー)

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
https://www.naoko-kuroda.com/

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