好調な売り上げを背景に、まさに群雄割拠となっているドラッグストア業界。その覇権争いは激化しており、業界7位のココカラファインと同4位のマツモトキヨシホールディングスが経営統合に向けて協議を始めている。ココカラをめぐっては、経営統合の相手としてマツキヨと同6位のスギホールディングスの名前が挙がっており、いわば“ココカラ争奪戦”が繰り広げられていた。
そもそも、ドラッグストアは地域密着型のチェーン店が多く、これまでも出店の空白地域を埋めるためにM&Aは頻繁に行われてきた。しかし、今回のココカラをめぐる動きは、単純な規模拡大のために繰り広げられてきたM&Aとは異なるという。
薬局のM&Aに特化したコンサルティング会社・MACアドバイザリーの花木聡社長は「業界の大再編の始まり」と話す。
「ドラッグストア業界はここ数年で寡占化が進み、上位20社が市場の86.4%を占めています。今後はさらにM&Aが進み、将来的には4~5グループに再編されると思います」(花木氏)
ココカラファインがモテモテの理由
その大再編の先陣を切るのが、マツキヨとココカラの動きといえそうだ。この2社が組めば、一気に業界首位に躍り出る。また、ココカラとスギが組んだ場合でも同様にトップに立つとされていた。では、なぜココカラがM&Aの相手として人気なのか。その秘密は株主構成にあるという。
「ドラッグストア業界はオーナー色が強く、大株主に創業家の関係者がずらりと並ぶような会社が多いので、買収が難しい。その中で、ココカラの株はファンドや銀行の割合がかなり高い。つまり、資本の論理だけで言えば、TOB(株式公開買付け)で株価を上げれば買収が可能なのです」(同)
ココカラはセガミメディクス(大阪)とセイジョー(東京)の経営統合によって、2008年に誕生した。そのため、オーナー関係の持ち株比率が薄まっているのだ。
一方のマツキヨとスギは典型的な同族経営企業だ。マツキヨの創業者は店名の由来となっている松本清氏で、現在の会長は息子の松本南海雄氏が務めている。スギは創業者の杉浦広一氏が現在も最前線で指揮を執っているが、すでに2人の息子が経営の中核を担うまでに成長している。両社の安定した同族経営は、しばらく続きそうな気配だ。
マツキヨとスギのように、創業者一族の影響力が強い会社同士の統合は難しい。一方、明確なオーナーがいないともいえるココカラは、同族経営のマツキヨとスギからすれば、M&A先としては願ってもない存在なのだ。また、ココカラを手にするメリットはほかにもある、と花木氏は分析する。
「マツキヨは1994年から2016年までの22年間も業界の首位をひた走っていましたが、現在は4位に甘んじています。ココカラとのM&Aで、長らく定位置だった王座を奪回したいという思いが強いのも、ひとつの理由でしょう。愛知県が発祥のスギは関東・中部・関西に店舗が集中し、マツキヨがM&Aで拡大してきた全国展開とは一線を画します。どちらかと言えば、全国展開同士のココカラとマツキヨが統合したほうが、販売の連携や物流の効率化などで相乗効果は生まれやすいでしょう」(同)