農林水産省は8月6日、2018年の食料自給率が過去最低の37%になったことを発表した。農林水産省は、天候不順により小麦や大豆の国内生産量が落ち込んだことが要因としているが、その説明は問題の本質を覆い隠している。
過去に食料自給率が37%になったことがあった。それは、1993年の米の凶作で大量輸入に追い込まれた時であった。同年は記録的な冷夏となり、日本全国の作況指数は「著しい不良」の水準となる90を大きく下回る74となった。やませの影響が大きかった青森県が28、岩手県が30、宮城県が37という低い数字となり、下北半島では「収穫が皆無」を示す、作況指数0の地域も続出した。
では、なぜ2018年はそのような凶作がなかったのに、食料自給率が37%となったのであろうか。
まず、1993年と2018年の品目別自給率を比べると、以下のようになる。
※以下、左側が1993年、右側が2018年の数値。単位:%。
米:75→97
小麦 10→12
芋類 89→73
豆類 4→7
大豆 2→6
野菜 88→77
果実 53→38
肉類(鯨肉を除く)64→51
牛肉 44→36
豚肉 69→48
鶏肉 77→64
牛乳・乳製品 80→59
魚介類 67→55
油脂類 17→13
これを見てわかるように、18年は1993年と比べると米、小麦、豆類、大豆の自給率が上がっている一方、芋類(16ポイント減)、野菜(11ポイント減)、果実(15ポイント減)、肉類(13ポイント減)、牛肉(8ポイント減)、豚肉(21ポイント減)、鶏肉(13ポイント減)、牛乳・乳製品(21ポイント減)、魚介類(12ポイント減)、油脂類(4ポイント減)などの自給率が大幅に下落しているのである。これが食料自給率低下の原因である。
そして、食料自給率は今後も低下し続ける可能性が高い。大きな要因は、TPP11や日EU経済連携協定による牛肉、豚肉、乳製品、野菜、果実の輸入農産物の急増が続いているのに加え、現在交渉中の日米FTAによって、食料輸入が急増する見通しがあるからである。政府は、食料自給率を2025年度までに45%に引き上げる目標を掲げながら、37%まで下落させ、さらに輸入自由化を主導して、さらなる食料自給率下落の方向を強めている。この政府の無責任さには、呆れるばかりである。
今、世界的に食糧危機問題が叫ばれている。世界人口が2050年に現在の76億人から97億人に増加するなかで、食料供給が追いつかない可能性が高いためだ。8月に発表されたIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)特別報告においても、すでに頻発している洪水や干ばつの影響に人口増加が相まって、2050年に穀物価格が最大23%値上がり、食料不足や飢餓のリスクが高まるとしている。このような時、食料の約7割を輸入に頼る日本が、食料を確保できない事態に遭遇する可能性も指摘されている。
このような見通しが出されている以上、輸入自由化による食料自給率下落をなんとしても回避するとともに、本格的に食料安全保障を真剣に議論する局面に直面しているといえる。
(文=小倉正行/フリーライター)