韓国は昨年の秋より景気悪化が深刻化している。景気が堅調に推移していれば経済成長率は3%以上となるはずであるが、2018年に続いて2019年の経済成長率は3%を切ることが確実である。また景気総合指数の動向指数からトレンドを除いたものを見ると、昨年4月をピークに秋頃から低下傾向が続いており、景気後退が鮮明となっている。
韓国の経済構造は世界景気の影響を受けやすいものとなっている。2018年におけるGDPに対する輸出の割合は42.8%と高い。そして輸出に占める中国向けの割合は26.8%を占めており、アメリカが12.0%である。よって特に中国、またアメリカの景気が悪くなった場合は韓国の輸出が減少し、需要、ひいては景気の落ち込みを招く。韓国の景気循環は良くも悪くも外的ショックがきっかけになることが多い。
韓国経済が昨年の秋頃から悪化した要因は米中貿易摩擦である。アメリカと中国が相手国からの輸入製品に対して関税を引き上げた結果、両国の輸出が減少し、これにより特に中国の景気が後退している。中国における今年の7~9月の実質成長率は過去最低を更新し、製造業購買担当者景気指数(PMI)も9月で5カ月連続、これを切ると景気が悪いと判断される50を下回った。
中国向け輸出は2018年11月から連続してマイナスが続き、2019年1~8月は、前の年の同じ時期と比較して17.6%の減少となっている。そして中国向け輸出が不振であることにより全体の輸出も2019年1~8月は9.6%減少している。これほど輸出が減れば景気に与える影響は甚大である。企業の先行きの不透明感も加わり設備投資が大幅に減少するなど内需も委縮している。
景気悪化に対する処方箋は金融政策および財政政策などマクロ経済政策を講ずることである。韓国では今年7月に0.25%、10月にさらに0.25%政策金利を引き下げた。しかし政策金利はすでに1.25%と史上最低となっている。韓国の場合、金融緩和をやりすぎると資本流出による急激なウォン安を招く可能性があり、金融政策の余地はほとんど残されていない。
また今年8月には約6兆ウォン規模の補正予算が国会を通過したが、その規模は当初予算の支出額の1.2%にすぎない小さなものである。内容をみても、日本による対韓国輸出管理適正化に対応するための部品・素材産業に対する支援、被災者支援などであり、公共投資といった波及効果の大きい事業が主に行われるわけではない。韓国の財政構造は現在のところ健全であるが、今後は急速に進む高齢化のため財政構造の悪化が見込まれており、景気浮揚のため財政政策を積極的に打つことは難しい。
韓国の景気は外的ショックの影響を受けやすく、マクロ経済政策で景気を支えることは難しいなか、控えめな政策を講ずることしかできない現状では、景気浮揚効果はほとんど期待できない。