
東須磨小学校の男女4人の教員による後輩教員に対する信じがたい暴行行為で注目されてしまった神戸市の教育界で、別の波紋が起きている。すでにシーズンは終わったが運動会の組体操だ。小学校で6段、7段、中学で9段など“人間ピラミッド”といわれる組体操が行われ、崩れてけがをするなど、神戸市では2016年度から18年度までの3年間で123人が骨折しているというから驚きだ。
一部の学校が高段ピラミッドを強行しようとしていたため、久元喜造市長がツイッターなどで「子供たちの体力も落ちており、危険な組体操はやめてほしい」などと訴えていた。しかし学校と神戸市教育委員会はこれを無視して強行。さらにけが人が出てしまい、神戸市では「今年度、市立小中学校の運動会などの組体操や練習中に66件の事故があり6人が骨折」(10月17日、神戸市教委の発表)した。今後、死亡事故でも起きたら、誰が責任を取るのか。
実は市長といえども止める権限はないという。教育問題に詳しい札幌市の猪野亨弁護士は「教育委員会は行政からの中立が保証されているため、建前としては市長といえども中止にできない。ツイッターで訴えたりするしかなかったのでしょう」と話す。
なぜか「組体操騒動」は関西に多く、東大阪市では今年6月の運動会で3校の小学校が7段ピラミッドを実施しようとして、保護者から強い不安の声が上がった。だが野田義和市長も実施に賛成し、この時は吉村洋文大阪府知事が会見などで「やめるべきだ」と懸念を示した。最終的に段数を落として実施されたが、野田氏は「残念だ」とした。「子供たちの達成感」などを理由に実施を求める教員や親も少なくはないという。吉村知事は「最後は教育委員会が決めること」とするにとどまっていた。
大阪府八尾市では15年、市立大正中学校で10段ピラミッドが崩れて一人が骨折するなど6人がけがをして問題化され、大阪市教委は翌年、全国で初めて人間ピラミッドを禁止した。大正中学の事故は10段のピラミッドが崩れ落ちて行く様子がインターネットで配信されている。中央部が崩れた瞬間、周囲の教員らは何もできないでいる様子がよくわかる。周囲にいてもどうしようもない。生徒を守るなら自分も中に入って落ちてくる生徒を受け止めるしかないはずだ。組体操をめぐっては、16年に広島県三原市の中学生が死亡して遺族が学校を訴え、訴訟になった。後遺症が残った子どもの保護者が学校を訴える訴訟も起きている。