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東芝、「資産売却で利益捻出」経営が限界に…稼げる事業創出が死活問題に

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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東芝、2019年9月中間決算を発表(写真:つのだよしお/アフロ)

 昨年6月、東芝は、稼ぎ頭であった半導体事業を売却した。それ以降、同社は社会インフラ事業を中心に、事業体制を立て直そうと改革を進めてきた。今までのところ、財務内容の改善やコーポレート・ガバナンス体制の再構築など相応の成果が出ている部分はある。

 一方、半導体事業を手放した東芝にとって、新たな収益の柱になる事業を育成することが喫緊の課題となる。自動車向けの半導体事業などで生産能力が増強されてはいるが、現在、それが同社全体の収益をけん引するまでには至っていない。それに加えて、中国の景気減速の鮮明化によって同社の一部事業の収益も下ぶれしている。世界経済の先行き不確定要素が増大するなか、既存の事業体制に依存する体質が変わらないと業績の不安定感は高まる可能性が高い。

 足元で世界的なサプライチェーンの再編の影響により、東南アジア新興国の一部では海外からの直接投資などが増えつつある。その結果、ベトナムのように想定された以上に景気が好調な国もある。そうした変化は、東芝が新しい収益源を手に入れるチャンスになるかもしれない。それを実現するには、東芝の経営陣が早期に改革を実行し、成長分野に経営資源を再配分できる体制を実現することが欠かせない。

稼ぎ頭=半導体事業分離の影響度合い

 東芝にとって、稼ぎ頭であった半導体事業を手放したことの影響は大きかった。それと同時に、同社経営陣は構造改革を重視してきた。経営再建を進めるなか、同社の経営陣は新しい取り組みを進め、収益の柱を確立することが重要であることは十分に承知していたはずだ。ただ、稼ぎ頭となる事業を育てることは口で言うほど容易なことではない。既存事業の選択と集中を進め、効率的かつ安定的に収益が生み出せる体制を確立するのが同社経営陣のひとつの目標だっただろう。

 東芝にとって半導体事業の売却は、債務超過を脱するためにやむを得ない措置だった。主力事業を売却せざるを得ないまで経営が混乱し、収益と財務内容を大幅に悪化させてしまったということだ。

 人工知能(AI)の開発とその実用化や5Gなどの実現に伴い、急速に社会全体でIoT(モノのインターネット化)が進む可能性が高まっている。半導体事業を売却した東芝がそうした変化にどう対応し、収益獲得の機会を見いだすことができるかはやや不透明な面が否めない。

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