ヤフーを傘下に擁するZホールディングス(ZHD)とLINEは昨年11月、経営統合すると発表した。両社の経営統合はEC企業の次なる再編に直結する。連結売上高は単純合計で楽天を抜き、国内最大になるからだ。
楽天は10年以上前から「楽天経済圏」構想を掲げている。自社グループでさまざまなサービスを提供し、利用者を囲い込む戦略だ。携帯電話事業者として本格サービスを開始するのは、楽天経済圏づくりの一環だ。
ZHDを傘下に持つソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長は「楽天包囲網」を目指してきた。中国ではアリババ集団のスマホ決済「アリペイ」が利用者数12億人と、現地で圧倒的な地位を占める。アリババに出資するSBGの孫会長はアリババをモデルに、スマホ決済「PayPay」を核とした経済圏構想を描く。ヤフーとLINEに携帯電話大手ソフトバンクが加われば、楽天に対抗する巨大なサービス企業群が揃う。今後の国内IT業界の勢力図はどう変わるのか、楽天がどう動くかがポイントだ。
「早くも楽天がメルカリの買収に動くとの観測が流れている」(業界関係者)。メルカリは新興IT企業の花形だが、参入が相次ぐキャッシュレス決済サービス市場で、同社のスマホ決済「メルペイ」の急激な拡大が見込めず、米国事業も含め黒字化の道筋が見えてこない。「我が道を一人行く」としているが、はたしてそれが可能なのか。
「ヤフーとLINEの統合が、ディー・エヌ・エー(DeNA)、サイバーエージェント、ミクシィにまで影響が及ぶ」との指摘がある。メルカリに関してはヤフー・LINE連合も触手を伸ばしている、との情報もある。メルカリは衣料品をはじめとするリユース品の売買が多く、ZOZOを買収したヤフーにとって魅力的だからだ。果たしてSBGと楽天のメルカリ争奪戦に発展するのか。
ちなみにスマホ決済では、オリガミ(非上場)が狙い目といわれている。KDDIなど大手企業から資金を調達して、新しいスマホ決済サービス「オリガミペイ」を始めた。こうした非上場企業も巻き込み、国内IT業界に再編の波が押し寄せようとしている。
(文=編集部)