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木下隆之「クルマ激辛定食」

ジープやアルファロメオがプジョーと同じ店に並ぶ?2月1日以降、輸入ディーラーに大変革か

文=木下隆之/レーシングドライバー
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【完了】ジープやアルファロメオがプジョーと同じ店に並ぶ?2月1日以降、輸入ディーラーに大変革かの画像1
「Getty Images」より

 年が明け1月9日、筆者のもとに1通の封筒が届いた。差出人は「プジョー・シトロエン・ジャポン株式会社(PCJ)」。結婚式の招待状や就任報告といった公的な案内状のような、ピンと角の張った純白の封筒である。

 内容は察しがついた。年の瀬も押し迫った昨年12月6日、海外のプジョーS.A(グループPSA)は、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と経営統合することに合意したと発表していた。それに伴い、日本国内の正規輸入元であるPCJにも、なんらかの動きがあるだろうと予想していたからだ。2つの巨大な世界的自動車グループが統合するのだから、傘下の日本法人で大幅な再構築が行われてもなんら不思議ではない。

 封筒には3つ折りにされた厚紙が差し挟まれており、3つの決定事項が案内されていた。見開いた右側にはクリストフ・プレヴォ氏が2019年12月31日をもってPCJの代表取締役を退任したことが記されており、中央にはプレヴォ氏に代わってアンジェロ・シモーネ氏が2020年1月1日付で代表取締役に就任したことが伝えられている。そして左側の頁には、PCJが20年2月1日に社名変更することが発表されている。新社名は「グループPSAジャパン」だという。これが傘下の動きだ。

 カタカナや欧文が綴られているフランス系企業の案内が、古色蒼然とした和風の封書で送られてきたことにちょっと笑いそうになったが、日本の輸入ディーラーであるわけだから、日本を尊重してくれたのだろう。

 それにしてもPCJは、親会社の度重なる合従連衡に翻弄されたといっていい。

 確かに自動車メーカーのグローバル化は激しく、かつてのライバルメーカーとも手を組む必要が生じている。複数メーカーと手をたずさえ、アライアンスを組織しないと生き残れない時代になった。400万台クラブが安泰だったのは、わずか数年前のことだ。今では1000万台グループでなければ将来性に黄色信号がともる。連結400万台の生産では弱く、1000万台を生産して初めて世界に対峙できるという時代なのだ。

 1976年に本国のプジョーがシトロエンを傘下に収めたのが、PSAグループの合従連衡の始まりだ。その後、トヨタ自動車と合弁会社をつくり、三菱自動車との資本提携を発表した。日本のメーカーとのアライアンスを模索した時代もあった。2012年には米ゼネラルモーターズ(GM)と資本関係を結んだ。中国の東風汽車とも資本のつながりがある。GMからオペルを買収、それに伴って英国ヴォクゾールも手に入れた。

 今、グループPSAが抱えるブランドは5つになる。プジョー、シトロエン、DSオートモビル、オペル、そしてヴォクゾール。そのうち、日本法人のPCJが扱うのは、オペルとヴォクゾールを除いた3ブランドである。新会社の「Groupe PSA Japan」は、この3ブランドを丁寧に育てていかねばならない。

 ただし、これで平穏になったのではない。PCJの親会社であるグループPSAは、フィアットやアルファロメオを扱うFCAと統合した。つまり、傘下の正規輸入ディーラーにも集散離合が行われるはずだ。新たな会社が発足する可能性は高いのである。

 グループPSAとFCAの統合によって、“1000万台クラブ”の資格を持つようになるだろう。単純計算で販売台数870万台、世界4番目の自動車グループとなる。当然、FCAの日本の正規輸入ディーラーであるFCAジャパンでも組織改革が行われるはずだ。ジープやアルファロメオ、マセラティといった世界的ブランドを抱えるFCAとの統合で、合計して13ものブランドを抱えることになりそうなのだ。

 PCJが「グループPSAジャパン」になるのは2月1日だ。それはそれで心の底から祝いたい。だが、それで新体制が整ったとは思えない。まだまだ動きがあることは想像に難くない。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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