ビジネスジャーナル > 企業ニュース > エクセル、たった4年で売上3割減
NEW
高橋潤一郎「電機業界の深層から学ぶビジネス戦略」

なぜエクセル(Excel)の売上は、たった4年で3割に落ち込んだのか?

文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役
なぜエクセル(Excel)の売上は、たった4年で3割に落ち込んだのか?の画像1
「エクセル HP」より

 電子部品商社エクセル(東証一部)は2020年4月に同業の加賀電子(同)の完全子会社となり、上場を廃止することが決まった。

 電機業界の動きを追うこの連載においても、15年7月にエクセルのことは一度採り上げた。同年の時点で、エクセルは14年3月期の5割増収に続き、15年3月期も8割増収と続伸したが、その増収を支えた取引先の倒産(会社更生法申請)で赤字に転落したということに危惧と違和感を覚えていた。結果的には、やはりと言うべきだろうが、15年3月期の2,352億円という売上高が同社のピークとなった。

 その後は急落。4年間で実に7割落ち込み、前期の19年3月期は売上高674億円にまで低下している。そして昨年末の19年12月についに加賀電子によって買収され、同社の全額出資子会社として生き延びる道を選んだということになる。

 そのジェットコースターのような経過を改めて振り返る。

2年間で2.6倍増、その後の4年間で7割減収

なぜエクセル(Excel)の売上は、たった4年で3割に落ち込んだのか?の画像2 エクエルは13年3月期には888億円という売上高だったが、2年後の15年3月期には2.6倍増の売上高2,352億円となった。この躍進を支えたのは台湾のタッチパネル大手、勝華科技(ウィンテック)向けの液晶デバイス販売である。同社向け販売が急成長を支えた。

 しかし14年にウィンテックが台中地方法院(地裁)に会社更生法の申請を行い、エクセルの業績は一転する。ここから一気に急落するわけだが、この時点ではエクセルはそれほど弱気ではなかった。取引先の会社更生法申請を織り込んでも、エクセルは16年3月期の期初には微減の売上高2,100億円程度を維持するとみていたのだ。

 クリアリーフ総研の取材に対しても会社側では、この時点では「(アップルなど)最終販売先は変わらないので(ウィンテックの会社更生法申請の)影響は限定的」と強気のコメントだった。しかし結果的には、期初に2,100億円としていた同年度の売上高は1,489億円にとどまっている。

 その後さらに減収が止まらなかったのは前述の通りだ。無論、エクセルの減収の原因はウィンテックの会社更生法申請がすべてではない。エクセルは液晶デバイスの取り扱いを主力としていたため、液晶市場低迷の影響が大きい。液晶を搭載するスマホやテレビ市場の停滞に加え、スマホもテレビも画面を液晶から有機ELに切り替える動きが続き、液晶市場は厳しい情勢が続く。こうしたなかでエクセルは車載用液晶デバイスやほかの電子部品販売を強化して展開したが、最後まで活路を見いだすことはできなかった。

 利益面でも、ウィンテックの会社更生法申請で、エクセルは同社への多額の売掛債権焦げ付きが発生。15年3月期には最終で78億円あまりの大幅欠損転落となっている。その後は15年3月期に関連損失を吐き出したことから、黒字こそ維持していたものの停滞基調が続いており、利益面でも厳しい状態が続いた。

 こうしたなかで、ついには自主再建を断念して、加賀電子の完全傘下に入る道を選んだということになる。

再編、統合が止まらない電子部品商社

 一方、加賀電子の側にも買収するにはそれなりの背景があった。

 電子部品商社業界はかつてないほど再編の流れが加速している。クリアリーフ総研では、外資などを除いた上場企業のなかで電子部品商社の売上高トップ10を毎年集計しているが、その順位は目まぐるしく変わる。エクセルのように売り上げが何かのきっかけで大きく落ち込むということもあるが、最大の変動要因は経営統合などによる業界再編である。

 20年3月期においておそらくトップ3を形成すると思われるのは、マクニカ・富士エレ ホールディングス(HD)、レスターHD、そして加賀電子だが、この3社はすべて再編を行っている。

 マクニカ・富士エレHDは、さかのぼること5年前、15年4月1日付でマクニカと富士エレクトロニクスが経営統合して現在の形となり、その持株会社が上場を維持している。レスターHDは19年4月1日付でUKCホールディングスとバイテックホールディングスが経営統合し、現在の形になった。そして加賀電子は、富士通系列の電子部品商社、富士通エレクトロニクス(横浜市港北区)を買収、完全子会社化は21年末になる見通しだが、すでに昨年から連結対象子会社としている。

 マクニカ・富士エレHDは上場2社の経営統合により業界トップに躍り出ており、さらにレスターHDも経営規模がほぼ同じだった2社が統合している。加賀電子も非上場ながら富士通系列でほぼ同規模の売上高があった富士通エレクトロニクスを傘下に収めて前述2社に迫っている。

 こうした経営規模拡大によるスケールメリットの強化を図る動きが、電子部品商社業界では止まらない。こうした加賀電子側の思惑と、すでに単独ではジリ貧になっていたエクセルの状況が一致して、今回の合意となった。

 エクセルの凋落と電子部品商社再編加速の流れが重なったのが今回の経営統合である。こうした動きは20年もさらに続くことは間違いない。

高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役

高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役

業界紙記者を経て2004年に電機業界の情報配信会社、クリアリーフ総研を創業。
雑誌などへの連載も。著書に『エレクトロニクス業界の動向とカラクリがよ~く
わかる本』(秀和システム)、『東芝』(出版文化社、共著)ほか
クリアリーフ総研

Twitter:@clearleafsoken

なぜエクセル(Excel)の売上は、たった4年で3割に落ち込んだのか?のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!