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小僧寿し、債務超過解消でも明るい未来見えず…10期連続赤字、異業種進出も失敗続き

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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小僧寿しの店舗(「Wikipedia」より)

 持ち帰りずしチェーンを展開する小僧寿しが、債務超過を解消した。2018年12月末の連結純資産が10億5700万円のマイナス(前の期は2億6400万円のプラス)と債務超過になっていたが、19年12月末は900万円のプラスになり、債務超過から脱却した。だが、業績は依然として厳しい状況が続いており、明るい未来図は見えてこない。

 小僧寿しは19年に第三者を割当先とする新株予約権の発行や債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ)を実施するなどして純資産の増加を図った結果、19年12月末には900万円の純資産を確保し、債務超過を解消した。

 一方で業績は厳しい状況が続いている。19年12月期連結決算は、売上高が前期比5.2%増の58億円、営業損益が1億9500万円の赤字(前の期は5億9100万円の赤字)だった。最終損益は1億1600万円の赤字(同16億7800万円の赤字)だった。営業赤字は16年12月期から4期連続、最終赤字は10年12月期から10期連続となる。

 小僧寿しは、かつては加盟店が2300店を超え、チェーン売上高で外食産業日本一に輝いたこともある外食の雄だった。だが、競争激化で事業規模の縮小を余儀なくされ、19年12月末時点の飲食店店舗数は持ち帰りすし店の「小僧寿し」や「茶月」など計約220店にとどまっている。1年前からは約30店減った。店舗数は減少傾向が続いている。

 小僧寿しを取り巻く環境は厳しさが増している。日本フードサービス協会によると、18年のすし店の市場規模は1兆5497億円で増加傾向にあるが、これは大手回転ずしチェーンがけん引したためで、持ち帰りずし店の市場は縮小傾向にある。

 回転ずしは外食産業のなかでも有望市場とされており、大手はどこも好調だ。各社の直近本決算の売上高を確認するが、「スシロー」を展開するスシローグローバルホールディングスの19年9月期連結売上高(国際会計基準)は前期比14%増の1990億円、くら寿司(19年10月期連結)は3%増の1361億円、はま寿司(19年3月期)は5%増の1242億円と、トップ3は増収を達成している。他の外食チェーンがうらやむほどの伸び率だ。

コンビニやスーパーなどの競合に押される

 一方で持ち帰りずし店は厳しい状況に置かれている。持ち帰り機能も強化している回転ずしチェーンに押されているほか、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなど「中食」を強みとする異業種にも侵食されている。スーパーやコンビニは、すしのみならず、すしの代替品となるおにぎりや弁当といった総菜も充実してきている。コンビニに関しては、店舗数が大きく増えている。小僧寿しはこうした競合に押されていった。

 こういった状況で小僧寿しが集客を実現するには、回転ずしチェーンやコンビニ、スーパーが提供できない価値を提供する必要があるだろう。

 もちろん、小僧寿しは対策を講じてきている。「多様な食を、多様な形で、多様な顧客へ」のスローガンを掲げ、持ち帰りずしに依存しない事業モデルの確立を図った。そしてコンビニなど競合が提供できない価値の提供を試みている。

 対策のひとつがデリバリーの強化だ。宅配代行サービス「ウーバーイーツ」が台頭するなどでデリバリー市場は活気づいている。また、昨年10月の消費増税の軽減税率の適用対象で食品の宅配に追い風が吹いている。そうしたなか、小僧寿しは18年12月期にデリバリーを手がけるデリズを子会社化し、デリバリー機能を強化した店舗を拡充するなどして需要の取り込みを図っている。だが、出店候補地における物件取得が計画通りに進まずに新規出店が計画を下回ったり、適正な店舗運営に必要な人員数が確保できないなど、デリバリー事業の収益性は思うように上がっていない。

 もうひとつの対策が、すしと他の食品の併売強化だ。小僧寿しにから揚げ専門店「元祖中津からあげ」を併設したり、天ぷらやとんかつなどを加えるなどして、すし以外の食品も販売する店舗への転換を図っている。これは功を奏しているようで、転換した店舗の売上高は高まっているという。ただ、持ち帰りずしの減少を補うほどには至っていない。持ち帰りずしにしても、需要が減っていることに加え、マグロなど海産物の原材料の高騰や人件費の上昇が直撃し、利益を圧迫している。

 このように対策は講じてきているが、今のところ抜本的な対策にはなっていない。結果、19年12月期の事業別の業績は、持ち帰りずし事業は売上高が前期比15.2%減の40億円、営業損益は8300万円の赤字(前期は4億6100万円の赤字)で、デリバリー事業は売上高が3倍の14億円、営業損益が4600万円の赤字(同6000万円の赤字)となった。どちらの事業も黒字化のメドは立っていない。

畑違いの業態への進出失敗を繰り返す小僧寿し

 こうした畑違いの業態への進出は、チャンスもあるがリスクもはらむ。小僧寿しは過去にこれで失敗した経緯があり、同じ道を歩まないとも限らない。

 小僧寿しはかつて「活鮮」など回転ずし店を展開していたが、持ち帰りずしと回転ずしでは仕入れルートが異なるなどで相乗効果が乏しく、13年に事業譲渡を余儀なくされた。また、14年からラーメン店「麺や小僧」を始めたが、後に経営から手を引いている。さらに、すしとピザ、丼の複合テイクアウト店を始めたこともあるが、こちらも失敗に終わっている。

 飲食店以外では、介護・福祉事業で失敗した。小僧寿しは16年に介護・福祉事業に参入したが、営業赤字が続くなど苦戦を強いられていた。採算改善のメドが立たないため、19年12月に同事業を売却している。19年12月期の同事業の業績は売上高が3億900万円、営業損益が6500万円の赤字だった。介護・福祉事業を売却することで、持ち帰りずし事業とデリバリー事業に経営資源を集中させる考えだ。

 このように、やることなすこと、ことごとく失敗している。いま進めているすしと他の食品の併売も、同様に失敗しないとも限らない。同じ轍を踏まないことを祈るばかりだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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