
トヨタ自動車が4月1日付けで副社長職を廃止することに対して、社内で動揺が広がっている。豊田章男社長が絶対的なトップとして今後も君臨し続けるとともに、息子である豊田大輔氏を次期トップに据えるための体制づくりを着々と進めるという章男社長の思惑が透けて見えるからだ。
社長に就任して10年以上が経過し、トップ交代を期待していた社員は落胆の色を隠せないでいる。多くの取り巻きに囲まれ、不平や批判は一切耳に入らない「裸の王様」の専横は、当分続くことになりそうだ。
トヨタは2011年に取締役の人数を27人から11人に減らすなど、章男社長主導で役員体制を段階的に見直してきた。2017年には取締役の人数を社外取締役を含めて9人体制に減らすとともに、元社長など、取締役経験者らのポストで61人いた相談役・顧問を9人に削減するなど、スリム化を進めてきた。
2018年にはトップダウン経営を明確化するため、副社長を各社内カンパニーのトップ兼本部長と位置付けた。章男社長は記者会見で自身と副社長6人を「7人の侍」と呼び、記者から冷笑を浴びせられていた。それから約2年。トヨタは副社長職を廃止することになり、副社長は「6人の落武者」と揶揄されることになる。
現在の副社長のうち、販売全般を担当するディディエ・ルロワ氏と、技術開発を担当する吉田守孝氏の2人が退任し、残り4人の副社長は「執行役員」に降格となる。ルロワ氏は兼務する取締役は留任するものの、4月以降、業務にはタッチしない。
「ルロワ氏は、お追従しか言わない副社長のなかで唯一、章男社長にも反対意見を述べる人物。昨年の東京モーターショーで、章男社長肝煎りのイベントとして実施した公開経営会議にも参加しなかった」(関係者)
そのあたりが退任の理由と見る向きがある。また、カルロス・ゴーン氏の問題でゴタゴタしていたルノーの次期トップとしてルロワ氏の名前が何度か挙がったことに「章男氏が不快感を示した」との声もある。
また、開発担当の吉田氏が退任するのは「自動車業界の世界的なトレンドとなっている電動化や自動運転への対応が遅れた責任を追及されたから」との声もある。