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アベノマスクで不良品続出、戦場と化した「保健所」に大量の検品を“押し付け”…現場の怒り

文=編集部
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布製マスクをする安倍晋三首相(つのだよしお/アフロ)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、政府が妊婦向けに配布した布製マスクのうち数千枚に汚れなどが見つかり、配布が一時中断している問題で、全国の自治体保健部局は混乱を極めている。厚生労働省に返品するために、地域の保健所や自治体職員がマスクの検品を行わなければならないからだ。ただでさえ感染拡大防止の要として業務が集中しているのに、不必要な負荷がかかっている。

検品させられる自治体の保健部局

 妊婦向けの布マスクは14日から全国の市町村に向けに、計50万枚が発送された。ところが自治体から不良品の報告相次ぎ、その総数は20日までに計117市町村約6700枚に上った。こうした事態を受けて、各自治体は22日ごろから順次配布を中止。政府からの返品指示もあり、順次返品作業を行う予定だった。

 そんななか、日本テレビ・フジテレビ両系のクロスネット局であるテレビ大分(大分市)は23日夕方のニュースで次のように報道した。

「大分市保健所には先週、2100枚が届いていてきょうは点検作業が行われました。この中には黒い染みがあったり髪の毛のようなものがついているといった不良品がおよそ640枚確認されました」

 つまり、保健所が布マスクの検品作業を行っているというのだ。政府は27日、妊婦用布マスクの製造を伊藤忠商事、マツオカコーポレーション、ユースビオ、興和の4社に発注していたことを明らかにした。そもそも検品は出荷時にメーカーが責任をもって行う業務のはずだ。なぜ、そんな作業を多忙な保健所や自治体の保健部局の職員が行わなければいけないのか。

「検品するのはメーカー、監督は政府の仕事では?」

 当サイトでは首都圏近郊の複数の自治体に対して、妊婦用のマスクに関する検品作業を行っているかを聞いた。千葉市保健福祉局健康福祉部健康支援課の担当者は次のように話す。

「今、まさに検品作業を行っているところです。厚生労働省の指示では『不具合があるものを返品してほしい』ということでした。つまり、自治体で検品して『返品する不良品』を見つけなくてはならないということです」

 東京都福生市福祉保健部健康課の担当者は「当市では配布を行う前にあらかじめ検品を行いました。箱だしから封詰め、枚数チェックなどの作業の必要があり、一通りチェックしたところ不具合はありませんでした」と話す。

 一方、横浜市こども福祉保健部こども家庭課の担当者は「検品作業はしていません。先週、国から指示があったとおり、返品しています」と回答した。

 埼玉県内の保健所関係者は次のように憤る。

「自治体の大きさによって業務量も異なるとは思いますが、当市では数千枚のマスクの検品を行っています。毎日、新型コロナウイルス関連のさまざまなお問合せや病院との折衝、感染源の特定や消毒計画の策定など戦場のような有様なのに、なぜ自分たちは検品をしているんだろうと腹が立ちます。検品するのはメーカーの仕事で、それを監督するのは政府でしょう。

 例えば大地震や大津波などの大規模災害時に、国が緊急支援物資として不良品の医療機器や不潔な包帯を送付した上で、『その中に不良品があるかもしれないから現場の職員で検品して使って』という指示をしたらおかしいでしょう? そんな暇が現場にあると思っているんでしょうか。

 国がメーカーに対し、責任をもってちゃんと清潔な製品をつくり出荷するよう監督指導してほしいです」

 首相官邸や厚生労働省が「国民の不安を解消するための政策」を立案するのは大いに結構だが、不備が生じたとたん、責任や後処理を現場に丸投げするのはいかがなものか。

(文=編集部)

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