
長らく低迷していたケンタッキーフライドチキン(以下、KFC)は今年1月に期間限定の「ケンタランチ」をレギュラーメニュー化して以降、売り上げが10%近く(対前年比)伸びているという。
KFC以外にも、サブウェイ、バーガーキング、リンガーハットなど、この数年で500円前後の「格安ランチ」を導入したチェーン店は多く、ビジネスパーソンや学生のランチ需要の争奪戦が過熱している。
ケンタランチ、大成功の裏側
KFCが年明け早々に導入した、ケンタランチ。なかでも、「オリジナルチキン(単品250円)」「ポテトS(単品230円)」「ビスケット(単品230円)」「ドリンクS(単品200円)」がセットになった「ランチS」は税込み500円と格安だ。それぞれを単品で購入すると総額910円となるので、410円も得になる。
業績回復の立役者となっているケンタランチだが、ランチメニューそのものの売り上げが業績アップにダイレクトに影響しているわけではないという。
飲食店販促コンサルティングを行う飲食店繁盛会の笠岡はじめ代表取締役は、「ランチメニューの導入により、全時間帯でのターゲット層が広がったことが業績アップにつながっている」と分析する。
「ケンタランチの定番化以降、つまり2020年1~3月の客数は昨年同月と比べて6%近く増えており、売り上げは10%近くアップしています。そして、注目すべきが『客単価』。ランチメニュー自体は格安にもかかわらず、客単価も1月が102%、2月が106%、3月が104%と、昨年同月を上回っているのです。これまで、KFCといえば『クリスマスなどのイベント時に食べるご馳走』という印象が強かったですが、ランチメニューを始めたことで『日常のフィールド』に入ることに成功。ランチのみならず、すべての時間帯で客数が増え、客単価も上がっていったのだと考えられます」(笠岡氏)
KFCは格安ランチという“販促メニュー”によって、従来の「ハレの日にバーレルで頼むスペシャルメニュー」に加えて、「日常の身近な食事」というポジションも獲得したわけだ。
「KFCは18年7月から、たびたびケンタランチを期間限定で導入しています。思うような効果が出るかを、入念にチェックしていたのでしょう。そして、『ランチの導入は全体の売り上げアップにつながる』という確証を得たため、レギュラー化したのだと思います」(同)
KFCの業績回復は、入念なマーケティングの成果といえそうだ。
「組み合わせ」でヒットした吉野家のW定食
では、多くの消費者が飛びつく格安ランチの魅力とは、なんなのだろうか。
「ランチに限らず、外食産業全般に『楽しさ』や『ワクワク感』を求めている人が増えています。そこで、既存のメニューを『組み合わせる』ことにより、新たな価値や魅力を生み出し、飽きがこない楽しさを演出しているのです」(同)
たとえば、中華料理チェーン店で並盛りのラーメン1杯と半ラーメン&半チャーハンのセットが同じ価格だとしたら、どちらがより“おトク”に感じるだろうか。既存メニューでも組み合わせて販売することで、オペレーションや仕入れを乱すことなく、消費者に外食ならではの楽しさやランチならではのおトクさを感じてもらえるわけだ。