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小田原市長選、公約で「ひとり10万円」→当選後「国の給付金のこと」と判明…批判の声も

文=編集部
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小田原市長選、公約で「ひとり10万円」→当選後「国の給付金のこと」と判明…批判の声もの画像1
守屋輝彦市長の公式YouTubeチャンネル「小田原市の地域医療を語る【てるチャンネル】」(5月3日公開)より

 東京都知事選は今週末、ついに投開票日を迎える。都知事選の政策論争のマンネリ化が叫ばれて久しいが、ほかの地方の選挙では今なお水面下で激しい暗闘が行われている。大手マスコミに注目されることもなく、各団体の組織票と地縁、血縁をめぐる激しい綱引きが有権者の見えないところで行われる。だが、注目を集めないからといって公約に適当なことを書いていいわけではない。

 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、首都圏に非常事態宣言が出されていた5月17日に投開票された神奈川県小田原市長選。接戦の末、新人で元神奈川県議会議員の守屋輝彦氏(53)=自民推薦=が、544票差で現職だった加藤憲一前市長(56)を破って初当選した。問題は、この選挙で守屋氏が掲げた公約だった。同市選挙管理委員会公式サイトで公開されている選挙公報を以下、引用する。

小田原市長選、公約で「ひとり10万円」→当選後「国の給付金のこと」と判明…批判の声もの画像2
市長選の選挙公報(小田原市選挙管理委員会公式サイトより)

「選挙公報の紙面の大きさの都合」で誤解を招いた?

 守屋市長の公約「市民を『守る』コロナ対策」の2つ目の項目に「ひとり10万円」とある。ぱっと見、市独自の新しい給付金を創設すると提案しているように見える。

 ところが、守屋市長は当選後に開かれた市議会6月定例会で複数の議員からこの公約を問われたところ、「国の特別定額給付金を迅速に執行するという意味で記した」と答弁したのだ。確かに「ひとり10万円を市独自で給付します」とは記していない。「ひとり10万円」がなんなのかはっきりしない。そのうえで、守屋市長は「選挙公報の紙面の大きさの都合」で丁寧な説明ができず「誤解を招いた」などと釈明した。

 一般的に自治体の首長選の公約は、無所属で立候補している場合、候補者自身の独自政策が記載されることが多い。コロナ対策として政府が全国民に10万円を支給する「特別定額給付金」は5月10日の市長選公示前に実施に向けて動き出していた。すでに給付が決まっていて、全国の自治体で事業が進行している国の給付金を、あらためて市長選の公約で掲げる意義はあったのだろうか。

 小田原市広報広聴課によると守屋市長就任後、各部局に「新市長の10万円はどうなったのか」「新しい交付金は支払われないのか」などとの問い合わせが20~30件寄せられているという。

「配布するとは書いていない」

 守屋市長の陣営の関係者は「そもそも小田原市にそんな財政的な余裕はありません。10万円といったら、国の給付金だって誰だってわかるでしょう? 『配る』とは書いていませんよ。重箱の隅をつつくような話です。市長選の時も争点になっていなかったし、地元メディアも質問していませんでしたよ」と弁解する。

 一方で、敗れた前職の加藤氏を応援した市議は次のように憤る。

「露骨な誘導です。そもそも市長選で、なんで国がすでに実施している政策を公約に掲げているんですか。意味がわかりません。『そんなこと言っていない』し『書いていない』。だけど『そう読める』『そう取れる』ような公約は厳に慎むべきでしょう。実際に市民が市役所に問い合わせていることを考えれば、問い合わせなかったけど『騙された』と思っている人はもっと多いはずです。そもそも民間がこんな広告を出したらJARO(公益社団法人日本広告審査機構)や消費者庁に通報されますよ」

 営業自粛に伴う各種経済活動の縮小で、生活に窮している人は日に日に増えている。国の特別定額給付金に加えて自治体から給付金が出るのなら欲しいと思う人は多いだろう。こんな時代だからこそ、詐欺などの悪徳商法に限らず、政治の世界でも人の弱みに付け込む思惑が密かに蔓延しているのかもしれない。

(文=編集部)

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