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藤和彦「日本と世界の先を読む」

中国、2025年までに内部崩壊する可能性も…未曾有の少子高齢化、工場と人の海外逃避

文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員
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「Getty Images」より

 中国共産党の重要会議である第19期中央委員会第5回全体会議(5中全会)が10月29日に閉幕した。

 会議に集まった約200人の最高幹部により「第14次5カ年計画」の骨格が固められたが、新たな5カ年計画の特徴は「2つの循環」である。貿易を柱とする「外」と消費を柱とする「内」の2つの経済循環で成長を維持する考えだが、その重点は「内」にある。中国指導部は今年5月、米国をはじめとする西側諸国との経済的デカップリング(切り離し)を想定し、国内経済(内循環)を柱とする新発展モデルを提唱していた。

 1978年に故トウ小平が掲げた「改革開放」の重点は「外」にあったのはいうまでもない。米国との良好な関係の下で中国は積極的に外貨を取り込み、「世界の工場」として輸出主導による高度成長をなし遂げた。今年の中国経済はGDPが100兆元(約1500兆円)を突破する見込みである。今回打ち出された「2つの循環」は、米国との対立の長期化に備え、消費など内需を拡大し、自力での安定成長を目指すものであり、改革開放からの大きな路線転換を図ろうとするものである。

「一人っ子政策」による人口構成のアンバランス

 だが「2つの循環」路線の成功の鍵を握る個人消費は、中国経済にとっての長年の懸案である。中国の昨年の個人消費の対GDP比は39%である。米国の68%、日本の55%、ドイツの52%に比べると格段に低いが、その理由は所得格差の大きさにある。

 中国の所得分配が非常に不公平であることは周知の事実である。人口の約半分にあたる7億1000万人の国民は、月収2000元(約3万2000円)以下で生活をしている。中国の高度成長を支えてきた2億9000万人の農民工の収入も、2015年以降、減り続けており、所得格差が改善されない限り、個人消費が伸びることはない。

 個人消費が今後さらに低迷する要因がある。少子高齢化である。中国民政部は10月23日、「2021~25年までの5年間に60歳以上の高齢者の人口は3億人を超える」ことを明らかにしたように、「少子高齢化」が急速なペースで進んでいるのである。

「総人口に占める65歳以上の割合が14%を超える」社会を国連は「高齢社会」と定義づけているが、中国の民間シンクタンクは10月、「2022年に総人口に占める65歳以上の割合は15%以上になる」と予測した。

 日米など先進諸国が高齢社会となった時点の1人当たりのGDPは、2万ドルをはるかに上回っていたが、これに対して中国の1人当たりのGDPは1万ドル程度にとどまっている。中国社会は「豊かになる前に老いる」という事態に直面しているのである。

 中国の人口構成に極端なアンバランスをもたらしたのは、いわゆる「一人っ子政策」である。中国政府は2016年から「二人っ子政策」の実施を決定したが、多くの国民は住宅ローンや医療費、教育費などの負担が大きく、「産めても養えない」との不安を抱えており、出生数が増える兆しが見えない。2019年の出生率は、1949年以来の過去最低を記録する有様である。

 中国の生産年齢人口(15歳~64歳)は、2013年をピークに減少しているが、「中国の総人口も2018年から人口減少が始まった可能性がある」とする海外の研究がある。中国政府系シンクタンクの社会科学院は2019年1月、「人口減少は早ければ2027年から始まる」としている。社会科学院の予測の元になっている出生率は1.6との前提だが、「実際の出生率は1.05前後ではないか」との意見が多い。

 日本では、生産年齢人口が1995年、総人口も2011年から減少し、人口動態が経済成長にマイナスに働く「人口オーナス」が常態化している。中国でも少子高齢化が政府の大きな負担となりつつある。文革などで伝統文化が破壊されたことから、家族で高齢者を扶養する風習がなくなり、政府が主体となって介護サービスを提供する状態になっているのは日本と同様である。中国の社会保障費(介護を含まず)は国家歳出の2割以上を占め、その伸びは国防費を上回っているが、実態に比べて財政の投入量ははるかに少ない。このような事情から、「中国経済も2015年に人口オーナス時代に突入したのではないか」との懸念が出始めている。

「外循環」にも赤信号

 実現の目途が立たない「内循環」だが、中国経済をこれまで支えてきた「外循環」にも赤信号が点滅し始めている。人件費の高騰に加え、米国との貿易摩擦の激化により、外資企業が中国から相次いで撤退していることから、移転先であるベトナムに密入国しようとする中国の失業者が続出しているのである(10月28日付米ラジオ・フリー・アジア)。中国政府は国境付近に、長さ数百キロメートル、高さ2メートル以上の壁を建設せざるを得ない状況に追い込まれているが、このことは中国経済の悪化が予想以上に深刻化していることの証左だろう。

 5中全会では党幹部の人事が発表されなかったことから、習近平総書記が2022年以降も続投することが確定したとされている。「中国共産党の存亡に最も危機感を持っているのは習氏だ」と言われているが、「内外から批判が高まっている習氏が最高指導者の地位を他の人に譲らない場合、党内の権力闘争が一段と熾烈になる」との心配の声も上がっている。ネット上では「習氏は中国の崩壊を加速させる『総加速師』」と揶揄されている。

「今後10年以内に米国を超え世界一の経済大国となる」とされている中国だが、「内外からの圧力の高まりで一瞬の内に瓦解してしまう」というリスクが高まっているように思えてならない。

(文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員)

藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

1984年 通商産業省入省
1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)
1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)
1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)
2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)
2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)
2016年 経済産業研究所上席研究員
2021年 現職
独立行政法人 経済産業研究所

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