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公明党、凋落の始まりか…大阪都構想投票で党支持者たちが“造反”、党へ“ノー”叩きつけ

文・写真=粟野仁雄/ジャーナリスト
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松井一郎市長と公明党の佐藤茂樹氏

 大阪市を廃止して24区を4つの特別区に再編成するという「大阪都構想」は、11月1日に住民投票が行われ、反対多数で否決された。大阪維新の会は「一丁目一番地」とする看板政策が崩れ、同会の松井一郎代表は代表の座を降りることを明らかにした。松井氏、吉村洋文代表代行はそれぞれ、大阪市長と府知事の職は2023年春の任期満了まで務める。

 賛否は1万7000票差で前回に続く僅差だったが、2015年の住民投票で否決された構想を2度目の投票にこぎつけさせたのは公明党だった。自民党は反対しており、今回、大雑把には賛成の「維新・公明」vs.反対の「自民・共産・立憲民主」の格好だったが、後者の勝利となった。

 ところが今回、創価学会員ら公明党支持者の半数以上が反対に投じたことがメディアの出口調査でわかっている。朝日新聞では54%、産経新聞では56%が反対票。否決の最大要因は、公明党支持者や創価学会員の「離反」だったのだ。

「なっちゃんです。維新さんは公明が提示した4つの条件を飲んでくれました。素晴らしい都構想案にしました。勝たせてください。勝たせてください」

 10月18日、JR大阪駅前や天王寺駅前で街宣車から賛成投票を呼び掛けたのは、公明党の山口那津男党首だ。隣には吉村氏、松井氏が並んでいる。車は大阪駅前など3カ所を巡った。接戦が報じられるなか、松井氏に「来てほしい」と頼まれてのことではあった。自公政権下、仮にも野党の応援に党首が来るなど異例のことである。

 だが、党首来阪の効果は薄かったどころか「マイナスだった」との声もある。大阪のある公明党幹部は、山口氏が松井氏と並ぶ写真を見て「否決されたらどうするんだ」と激怒したという。関西には維新と全面戦争している自民党幹事長の二階俊博氏がいるにもかかわらず、都構想で公明党が維新にすり寄っていたからだ。

「公明党がおかしなことをしなかったら、こんな投票なかったんですよ」。反対運動の先頭を走っていた自民党大阪市議団の北野妙子市幹事長が街宣中、淀川区のスーパーで年配の男性に説明していた。維新の会は大阪で府議会は過半数だが、市議会は過半数に達していない。公明が賛成に回らなければ都構想の投票実施は成立しなかった。

支持者を馬鹿にしたツケ

 遡れば2014年に当時人気絶頂の橋下徹大阪市長から「都構想に賛成しなければ自分も含めて(公明党の現職衆院議員がいる)選挙区に立候補する」と言われて、真っ青になった公明党は、「構想には反対だが投票自体には賛成」とした。公明党は全国の小選挙区で8人当選していたが、うち4人が大阪。まさに最重点区なのだ。

 2015年の投票は反対多数で否決され、橋下氏は政界を退いたが、その後、知事選、市長選で圧勝する維新は再提案してくる。

 2018年12月、都構想を協議する法定協議会で公明党大阪本部の佐藤茂樹会長は、松井氏と激しくやりあっていた。その際、松井氏が「約束違反や」と怒った上、ある「密約」を報道陣に暴露したのだ。維新は公明党に対して水面下で「都構想に賛成すれば選挙区に候補を立てない」と提案し、公明側はそれを飲んでいた。

 だが、学会員らは「維新の会憎し」で必死に戦ってきた。彼らには「えっ、上層部はそんなことをしていたのか」と映ったはずだ。昨年の統一地方選までは公明党は維新と戦ったが、自民の重鎮が次々と維新に落とされた姿を見て、さらに怖気づき全面賛成に回ってしまったのだ。

 前回の住民投票では、公明支持者や学会員は必死に反対の運動をしていた。それが、特別区の数を5から4にする程度の変更をして党中央が「前回は反対でしたが今回は公明党が協力した素晴らしい都構想の協定書ですから賛成しましょう」と豹変させたのだ。

 しかし自主投票で学会員らは賛成に動かなかった。選挙の時、地区集会などにはいつも学会関係者が動員をかけてにぎわせて見せるが、今回はさっぱりだった。ある学会の男性はいう。

「党の幹部たちは、国会議員の議席を守るためには私たちの矜持はどうでもいいのか。もう党利党略でしかない。維新に脅されては媚び続ける、みっともない姿に情けなくなりました。維新が怖かったと正直に言えばまだいいのに」

 公明党発祥の地は大阪だという。それならなおのこと、党幹部たちは浪速の支持者のどこを見てきたのか。平和主義をかなぐり捨てたPKO法案賛成に始まり、政権与党にしがみつくため「日和見」を続けてきた公明党。それは勝手だが、党首が現地入りして「なっちゃんです。勝たせてください」と言えば、自分たちを支持してくれる創価学会員たちが唯々諾々と従ってくれると思ったのか。それなら、どの党よりも支持者を馬鹿にした話である。

 今回の住民投票で学会員たちが投じた反対票は、「よらば大樹」で動いてきた党幹部に対して「NO」を突き付けた、関西人らしい反骨精神の発露だった。国会議員の議席を守るための維新にすり寄り続けた挙句の敗北は、公明党の今後の党運営にとって「維新の会」以上に深刻な打撃となった。

粟野仁雄/ジャーナリスト

粟野仁雄/ジャーナリスト

1956年生まれ。兵庫県西宮市出身。大阪大学文学部西洋史学科卒業。ミノルタカメラ(現コニカミノルタ)を経て、82年から2001年まで共同通信社記者。翌年からフリーランスとなる。社会問題を中心に週刊誌、月刊誌などに執筆。
『サハリンに残されて−領土交渉の谷間に棄てられた残留日本人』『瓦礫の中の群像−阪神大震災 故郷を駆けた記者と被災者の声』『ナホトカ号重油事故−福井県三国の人々とボランティア』『あの日、東海村でなにが起こったか』『そして、遺されたもの−哀悼 尼崎脱線事故』『戦艦大和 最後の乗組員の遺言』『アスベスト禍−国家的不作為のツケ』『「この人、痴漢!」と言われたら』『検察に、殺される』など著書多数。神戸市在住。

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